子どもの考えと評価

 
   
        子どもの考え        


桃子は、クラスでいちばん小さな女の子、
ランドセルをしょって歩くと、いつもみんなから遅れてしまう。
ある日の下校、みんなに追いつこうとしても、
ランドセルが重すぎて追いつけない。
「どうしよう、そうだ、ここなら大丈夫、ここに置いていこう。」
桃子は、おまわりさんの派出所の扉の前にランドセルを置いて走っていった。
同級生がそのランドセルを見つけて、家まで持ってきてくれた。


朝顔の種をまいて、花を咲かせましょう。」
種まきの日、先生は袋に入った朝顔の種を、教室で配ってくれた。
朝から雨がぽつぽつと降りかけている。
桃子は、はさみで種の袋を切って、
種を出した。


桃子は小さな指に小さな朝顔の種をつまんで、
プランターの土に埋めた。
「雨が降りはじめたから、じょうろで水をやらなくていいですよ。」
先生が言った。
雨の粒が、プランターの土をしめらせていったから、
じょうろは使わなかった。
雨は本降りになった。


朝顔のつるがどんどん伸びだした頃、
「テストをします。」
と先生が言った。
先生は用紙を配った。
桃子は問題を順番にやっていった。
朝顔を植えるとき、何を使いますか。」
こんな問題があった。
桃子は、「はさみ」だと思ったけれど、選択肢には「はさみ」はない。
「じょうろ」というのはあった。
でも、それは使わなかったもの、
桃子は、「はさみ」と書き加えて○をつけた。


先生は○×をつけて、テストを返してくれた。
「はさみ」は×だった。
朝顔を植えるときに使うのはじょうろです。」
と先生は言った。


先生が三日間出張することになった。
前日先生は桃子に言った。
「先生がいない間、桃子ちゃんが先生の代わりです。
給食の時間に騒いだ子の名前を紙に書いておいてね。」


桃子が家に帰ってそのことを言うと、
お姉ちゃんが、
「騒いだこの名前? そんなのやめて、まじめにやった子の名前を書いたら」
お母さんも賛成した。
桃子はそうすることにした。
桃子はちゃんとして、よくやった子の名前を書いた。
「賞状をつくったら」
お姉ちゃんがまた言った。
そこで桃子は、真面目にやった子の賞状を画用紙でつくった。
先生が学校に来る日、桃子は賞状を持って登校した。


「これは先生が頼んだことではありません。
桃ちゃんは、先生の頼んだことをしてくれなかったのね。」


先生は、しからなかったけれど、
賞状は持って帰りなさいと言って、
受け取らなかった。