小さな手作り豆腐屋


     横丁を入れば


さびれた商店街のメイン通りから、
細い横丁へ十数歩はいったところに、
古い長屋風の家並みがあり、
あれれ、こんなところにと思ってしまった、
小さな手作り豆腐屋と、
その向かいに鶏のから揚げを売っている
もっと小さい店があったのです。
目立つ看板もなし、ただ小さな板に「豆腐」と書いてあるだけ。
間口一坪ほどの土間で、豆腐や油揚げを買うのですが、
豆腐で作ったお菓子なんかも手作りして置いてあり、
小さく切ったのを試食してみたら、おいしい。
この店の豆腐、
ためしに食べてみようと、
厚揚げとヒロウス(がんもどきのことです)を一つずつ買い、
昨日作ったジャガイモとたまねぎと豚肉の煮物の、
煮汁の残りに入れて、
コトコト煮てみたら、
なんとうまいことうまいこと、
これから、この豆腐屋でときどき買うことに決めました。
まだ、こういう店が残っているのです。
広くは知られざる、しかし近隣の人たちに知られて愛されている、
あまり儲かりもしないけれど、
ほどほどに儲けて、人々に喜んでもらえて、うれしい、
という店が生き残っていたのでした。
野菜とおいしい豆腐、油揚げ、
これがあれば、おかずの心配無しです。
厚揚げの小で、50円、
言うこと無しです。