「銀河鉄道の夜」


          さびしい君へ


宮沢賢治が「銀河鉄道の夜」という童話を書いているのを、
知っていますか。
知ってるけれど、読んでいません?
そうですか。じゃあ、読んでみてください。
この童話は、何かが分かるというような童話ではなく、
何かを感じる、という童話です。
賢治の心を感じる童話です。


ひとりぽっちの、さびしく哀しい気持ちの人、
幸せって何だろうと思っている人、
心が迷い道に入っている人、
読んでみたら何かを感じるでしょう。
その「感じること」がとても大切なのです。


登場人物のジョバンニが、こんなことを思っています。


「ぼくは、どこへもあそびに行くとこがない。
ぼくはみんなからまるで狐のやうに見えるんだ。」
「ぼくはもう、遠くへ行ってしまいたい。
みんなからはなれて、どこまでもどこまでも行ってしまいたい。
それでももしもカムパネルラが、ぼくといっしょに来てくれたら、
そして二人で野原やさまざまな家をスケッチしながら、
どこまでもどこまでも行くのなら、どんなにいいだろう。
カムパネルラは決してぼくを怒っていないのだ。
そしてぼくは、どんなに友だちがほしいだろう。
ぼくはもう、カムパネルラがほんとうにぼくの友だちになって
決してうそをつかないなら、ぼくは命でもやっていい。
けれどもそう言おうと思っても、
いまはぼくはそれをカムパネルラに言えなくなってしまった。
一緒に遊ぶひまだってないんだ。
ぼくはもう、空の遠くの遠くの方へ、たった一人で飛んで行ってしまいたい。」


ジョバンニの気持ちが、あなたの寂しさにひびいてきます。
ジョバンニは、自分を見つめ、そして人のことを思って、心を飛ばします。


「その氷山の流れる北のはての海で、
小さな船に乗って、風や凍りつく潮水や、
烈しい寒さとたたかって、
だれかが一生けんめいはたらいている。
ぼくは、その人に、ほんとうに気の毒で、
そして、すまないような気がする。
ぼくはその人の幸いのために、
どうしたらいいのだろう。」


この物語は、幸福をさがす物語です。
答えはないかもしれません。
こうしたら幸福になれますという答えは、
あるのでしょうか。
でも、それをみんなは求めて生きています。
幸福の条件はあっても、
幸福になれるかどうか分からない。
どうしたら幸福になれるのか、
そこから先は自分の旅です。


「天上へ行かなくたっていいじゃないか。
ぼくたちここで、天上よりいいとこを
こさえなきゃいけないって、
僕の先生が言ったよ」


答えはないけれど、答えはあるようでもあります。
ジョバンニの友だちを求める気持ちはたいへん強いものでした。
たぶん君の心もそうでしょう。
ほんとうの友だちがいれば、
どこまでも進んでいけそうです。
そこに幸せをつくる道があるように思われます。
ひとりぽっちから、抜け出す、
そこに道があります。
まずは、読んでみましょう。
そして感じましょう。


謎のような物語、大人の人にも読んでほしい物語です。