トマトの収穫


       トマトジュースとトマトソ−ス


朝五時過ぎ、ランを車に乗せて出発する。
目的地はタカオさんのトマト畑。
朝のトマト収穫の手伝いだ。


このトマトは、ジュースやソースに加工するもので、
このあたり、たくさん栽培されている
支柱や覆いのない露地栽培で、
イカ畑みたいに平面に広がっているから、
畑を初めて見たときは、
なんだ、これは、
こんなトマトがあるのか、
とちょっと変なものを見たような印象だった。


タカオさんは、無農薬有機栽培のトマトをそれ専門の加工場に運んで
ビン詰めにしてもらっている。
加工されたジュースにはタカオさんの似顔絵と農場名を書いたラベルが貼られる。
りっぱな製品だ。
それで味のほうはどうかというと、実においしい。
そんじょそこらのトマトジュースとは味も品質も違う。


朝は風がさわやか、さわやか。
畑に着くと、ランをリードでつないでおき、
ぼくはかごを二つ両手に持って畝の間に入っていった。
一つのかごには、赤く熟した傷なしのトマトをもいで入れる。
もう一つは、出荷できないものを入れる。
腐れや傷物、虫や野ネズミに食われたもの、
はねられるトマトの量は出荷用の三分の一ぐらいある。
これは田んぼのアイガモが好んで食べる餌になる。


前かがみになってトマトをえり分けながら収穫していくから、
腰に応える。
少し進んでは腰を伸ばす。


この畑、タカオさんが忙しくて手が回らず、草ぼうぼうになっていた。
今も未だ、四分の一ぐらいの畑にトマトを覆い尽くす草が残っていて、
いやあ、これは大変だ。
トマトには多雨もこたえる。
病気も発生する。


タカオさんにとって、
一年間のわずかな収入源のなかでも代表となっているトマトだが、
今年はその収入も期待できそうにない。


我が家ではタカオ畑のトマトを購入して、
トマトソースを作っている。
洋子は、それ用のビンをたくさん買ってきた。
トマトだけを厚手の鍋に入れ、
とろ火で三時間煮て水分を飛ばす。
洋子は何時間もかけて、一年間分を作っている。


タカオ農場の手伝いを終えるのは七時ごろ、
手伝うのはわずかな時間だ。
ランにカモ用のコンテナからトマトを二個もらって与えると、
ぱくぱく食べた。
子どもの頃から野菜と果物が大好きな犬だ。
じゃあ、帰るとするか。
家に帰って朝ごはんだよ。