春

四月に入った枯れ色の庭に、
スイセンがにょきにょき葉を伸ばし、つぼみを出し、
黄色い花がいくつか咲き始め、
毎年、ほんまにこの数十本のスイセンの、
しゃきっとした、みなぎる謹厳なやさしさに、
ほれぼれ、ほれぼれして、
敬愛の念をおぼえて、敬意を表している。


ビニールハウスで、朝十時に苗の店を出して、
午後五時にはぱかぱかと店を閉めている、
苗売りのオッチャンから、
レタス、キャベツ、ブロッコリーの苗、合わせて十六本買ってきて、
薪ストーブから灰を取り出し、鶏糞とを合わせて土に入れ、
ざくざくとハコベオオイヌノフグリの草を三角鍬で削り取り、
たかたかと耕して畑に植え、
毎朝霜も降りるし、今朝も雪がちらちら舞っているし、
保護をしてやろうじゃないか。
苗の一本一本に、鶏糞の袋の底を切って筒状にしたのを、
一つずつ苗の上にかぶせ、
苗の周りに四本の支柱を突き刺せば、
十六本の四角柱が並んだ。


去ることをためらっている冬、
今年はしつこく、ねばりづよい。
だが、植物の命はきっぱり強く、バラは新芽をふくらませ、
クリスマスローズは花を咲かせている。


朝、ゴミ出しに集積場に行ったら、
かっこよい自分の家の農場のワッペンを胸に付けたつなぎの作業服を着た正さんが、
今日の当番で来ていた。
「よう、スナフキン
正さんは黒いハットをかぶり、ムーミン谷のスナフキンみたいだ。
大友さんも来ていたからコーラスのメンバーは三人そろい、
そこへ安田さんも来た。
合唱メンバー四人になったぞ。
「じゃあ、ここで早春賦を歌うかあ。」
「そうしよう。」