共存共生

 畑を歩いて、今日は何を持っていけるかな、キュウリは二本、ピーマン一個、シシトウは二つかみ、ササゲ二つかみ、これだけあれば今日と明日の分になるだろう。ゴーヤは明日、もいで持っていこう。ナスはつやつやナス色に光っている。ピーマンもぴかぴか緑色に輝いている。
 玄関のピンポンを押す。
「みよこさん、野菜持ってきたよー」
 顔を出したみよこさん、うれしそう。
「いつも、すまないね。ありがとね。にいさんの顔を見ると、元気になるよ。」
 みよこさんの方が、ぼくより9歳も年上なのに、「にいさん」かい。
「もう、やせてね。四十五キロだよ。毎日持ってきてくれた野菜食べて助かるよ。」
「肉類も食べなきゃ、いかんよ。」
「あまり食べれんだよ。歩くのもやっとで。横になってるだ。」
 みよこさんは、ひとり暮らし。子どもはいない。姉さんと二人で、高齢者のホームに入ったけれど、生活が合わずに戻ってきた。食事は施設で作ってくれる。けれど一人で車に乗って外出することができない。それに愛犬のマミを施設に連れていけなかった。マミは家の庭につながれたまま、ご近所のミヤさんが餌と散歩に夕方来てくれていた。だからみよこさんは脱出した。
「私は、わがままだからね。自分のしたいことができない暮らしは、合わないね。」
 姉さんは施設に残って、みよこさんは還ってきたものの、孤独な暮らしは骨の髄まで寂しさがしみ通る。



 我が家の庭には、クモがいたるところに巣をはっている。アシナガバチがあちこちに巣をつくっている。カタツムリが木の幹をはっている。
 空中にはった一つのクモの巣に、6匹もクモがいる。テリトリーの侵害というものがまったくないようだ。親子なんだろうか。クモの体に大きさの違いがある。いちばん大きいのが親グモだろうか。他のクモとの距離は近いのが5センチほど、いちばん遠いのが20センチほど。そんな近くにいて、空中の一つのクモの巣に共存している。ここに餌になる昆虫がかかったら、どうするのだろう。獲物を分かち合うのだろうか。