小さな命

 

 昼ごろから雪がチラつき出し、次第に風も出て、吹雪になってきた。

 こたつに足を突っ込んで本を読んでいたら、

    背後のガラス戸に、どかんと音がした。何だ?

 振り向くと、キジバトがバラの木の根方に落ちている.

 あー、ぶつかったのか、

 ハトは、吹雪をさけて家のなかに飛び込もうとしたのか。 

 大丈夫か?

 ハトはうずくまって、頭をかすかに下げていった。

 左の翼のふくらみが、閉じていく。

 あー、あー、命が、命が、

 生き返れ、生き返れ。

 ハトの頭は地面に着いた、もう動かない。

 辺りは白一色になっていく。

 ぼくは外に出て、ハトをそっと両手で持ち上げた。もう動かない。

 命よ、よみがえれ。

 ぼくは発泡スチロール箱にハトをそっと入れて軒先に置いた。

 箱の中でハトの命は消えていった。

 哀切の念が胸に湧く。

 吹雪は烈しくなった。

 と、ハトの落ちたところから二メートルほどの、

 シャクナゲの根方へ、キジが歩いてきた。

 一面の雪、シャクナゲの根方は雪が積もっていない。

 キジはしばらく地面を掘り返して何か食べていた。

 

 吹雪はさらに強くなり、いちめん白の世界になった。