2022-01-01から1年間の記事一覧

教え子からの手紙 2

「夕映えのなかに」出版後、「卒業以来32年ぶり」という、加美中学校の卒業生のヤナから、なんともすごい回顧談と贈り物を受け取った。 彼女は、28歳の時に両親の大反対を振り切って結婚し、高麗大学の大学院で言語学を学び、日本にもどって仕事に就いた。仕…

教え子からの手紙

同窓生のつながりで、小説「夕映えのなかに」が伝わっていって、卒業してから連絡のなかった教え子から、「本を購入して読んでいる」という、うれしい便りが何通かあった。萬代君につたえたのが、紀子さんだった。 紀子さんの手紙から、その一部。 ――私の思…

教え子からの手紙

5月出版した「夕映えのなかに」(本の泉社)を読んでくれたかつての教え子や友人が、心のこもった感想をメールや郵便で送ってくれている。彼らが卒業してから、数十年の時を隔てて、晩年の今、間接的な再会ができたことは大きな喜びで、励ましになっている…

世界にまたがる二人

何年ぶりだろう、カズヒロ君と会った。大工のケイタ君が車で連れてきた。 パプアニューギニアからはるばるとやってきたカズヒロ君、裸足にサンダルを引っかけ、日に焼けた顔、体は前後も横幅も、たくましくなっている。二人は、ムラの学園の同期生、今年50歳…

らっきょうの歌

鶴見俊輔は、戦後間もなくから、ぽつりぽつりと詩を書いていた。 「わたしの葬式で配れるように、詩集を作りたいと思っているんだ。」 詩集の題は「もうろくの春」に決めていると。 そうして、「もうろくの春」は小部数ずつ版を重ね、「鶴見俊輔全詩集」にな…

事件に想う

過去の記録ノートを見返していたら、こんなのがあった。 16年前、朝日新聞「声」欄にぼくが投書した原稿だった。 <論説主幹の若宮啓文氏が書いておられたが、加藤紘一氏の実家への放火事件に対して、小泉首相にも安倍氏にも憤る声無く、取り締まりを検討す…

鶴見俊輔の眼

今は亡き哲学者の鶴見俊輔がかつて、雑誌「東京人」の相撲特集に、こんなことを書いていた。往年の名横綱、大鵬と柏戸についてのエピソードである。 「樺太(サハリン)出身で、父親がウクライナ人で、母親が日本人の大鵬は、苦労して横綱まで進み、好取組を…

校長への電話

7月2日に、出身校に贈呈した「夕映えのなかに」のことを書いた。「何の返事もない」ことを。 その後、やっぱりこのままにするのはよくないと思う。今の学校はそういうもんだ、ですましてはいけない。 まず出身高校の方に電話をした。 「私は母校の遠い過去の…

認知症

年が年だけに、私も記憶していることがあやふやになることが多くなった。今日は何月何日? えっと何日だったけ。 彼の名前は? えっとなんだったっけ。 家内が一冊の本を生協から購入してくれた。タイトル「ボクはやっと認知症のことがわかった」、著者は長…

畑の野菜

今朝5時から、涼しいうちに久保田の畑のジャガイモ掘りだ。 昨日は夕方4時ごろから6時ごろまで、日差しが和らいだ時に畑に行った。5月の脊柱管狭窄症以来、この畑に来れなかったから、草がひどい。ジャガイモ畑なのか草畑なのか、分からないほど、草ぼう…

イワちゃ、やすらかに

この信濃では、火葬の後本葬を行う。関西では本葬があって火葬となる。 三日間にわたるイワオさんの葬儀が終わり、喪主である息子のサトルさんが花束を持って我が家に挨拶に来られた。 手渡された挨拶文を読んだ。父イワオさんへの愛情がしみじみと心にしみ…

イワちゃんとの別れ

イワオさんが亡くなった。近所に住み、この地区で長く、家の建具職人をしながら農業をやってきたイワちゃん。 一昨日、お通夜に行って、お別れしてきた。親戚や隣組の人たちが集まっておられた。 お通夜に行く前、ぼくはヒョイと思いついた、「歌をうたって…

小さな人間の価値

小田実が亡くなったのは2007年、阪神大震災の後、小田は、 「人は殺されてはならない。棄民にされてはならない」 「政府は、『住専』の破綻に対しては公的資金を投入するが、震災で家や財産を無くした被災者にはびた一文も出さない。これが人間の国か」 と、…

キスゲに寄す

16年前、安曇野に引っ越しをしてきた年、夏に技能研修性を連れて、霧ヶ峰に登ったことがある。 そのころ、元総評議長の槙枝元文さんが立ち上げた、「日中技能者交流センター」の日本語教員を勤めていた私は、愛知県の西尾市にあった研修所で、中国からやって…

返事をしない校長・学長

五月に出版した小説「夕映えのなかに」(本の泉社)を、私の出身校や勤めてきた学校に五月末に贈呈した。 「夕映えのなかに」は、その時代の学校という舞台、友だちという存在、政治や社会のありかた、歴史、そして私の人生の意味や生き方に重大な影響を及ぼ…

曲がりくねった道

先日、明石に住む息子が信州にやってきて、単独行で、上高地から蝶ヶ岳に登った。稜線に出ると、猛烈な強風に襲われ、風速、25メートルだったとか、ほとんど前進かなわず、吹き飛ばされそうだった。体を丸め、地を這うように歩いた。 息子は蝶ヶ岳から常念岳…

トンビを追い払う親モズ

驚嘆するのは、モズの親の愛情。 ヒナが巣立ちして数日経つのに、親鳥は巣立ったヒナに呼びかけている。 チチチチチチチチ‥‥、 ヒナはまだ餌になる虫を捕れない。ヒナに餌をやらねばならない。なんと親モズの愛情の深さよ。 その親モズの愛情の、どえらいシ…

モズの巣立ち

モズが生垣に巣をつくっていた。生垣は三メートルほどの高さになっている。 アカカナメの樹が端に、でっぷり太って茂っている。そこからイチイがぎっしり並んで茂っている。モズはこれまでアカカナメの茂みに巣をつくっていた。今年は、イチイのきのなかに巣…

チロル、緑のなかで自由に学ぶ

何年か前、チロル地方に遊んだ。 乗り継ぎのウイーン空港で待っているとき、巨大なポスターが目に入った。 オーストリアン航空のポスターだ。 英語の文字が山岳写真の上の書かれている。 私たちは、あなたのほほえみのために飛ぶ。 フリータイムから、フリー…

軍隊の中で

こんな文章に出会った。 私が野砲一連隊に入隊していた時、われわれの教官に、一人の中尉がいた。ある日、演習の時、われわれに練兵場の隅に塹壕を掘らせ、その中に大砲を埋めさせて、それからわれわれ兵卒たちに順々に次のようなことを聞いたものである。 …

日本が果たすべきこと、役割

かつて中国武漢大学で日本語を教えた時、緑したたる森のなかの大学図書館によく行った。ビルの五階が日本の膨大な書庫だった。 そこで見つけた京大の山室信一氏の著に、こんなことが書かれていた。 「竹内好が、『満州国をでっちあげた日本は満州国の葬式を…

ロシア革命の国の今

さらに濱野成秋氏は著書で、こんなことも書いている。 「大正時代、関東大震災のどさくさにまぎれて、無政府主義者の大杉栄は、伊藤野枝とともに、甘粕大尉に虐殺され、井戸に投げ込まれた。 大杉栄の『日本脱出記』は、大杉の遺作である。そこにこんな文章…

福沢諭吉は述べていた

徳川幕政から薩長の新政府になった明治二年、福沢諭吉が専制政治について書いているのに驚く。濱野成秋の著書で知った。 諭吉は、「モナルキ」、すなわち「立君」という論を書いた。専制君主政治はどんなに国を難渋させるか。原文を現代語に変える。 「立君…

自転車パンク修理

自転車の後輪が、空気を入れてもすぐにペチャンコになる。どうもパンクしているようだ。どうしたもんだろう。自分で修理してみるか。けれどガタガタのわが左脚、痛んで力が入らない。自転車が使えなかったら困るなあ。 親しくしているご近所のオーさんに言う…

人が転換するとき

1921年、アイルランドがイギリスから独立したとき、北アイルランドのプロテスタント系住民が、カトリック系と対立した。 1969年、両者の抗争は首都に広がり、泥沼化した。アイルランド統一を掲げる共和軍のテロが頻発、イギリスは軍を出して鎮圧に乗りだし、…

緑うるわし

15年前、庭に白樺の木の苗を一本植えた。その苗は成長して、梢が屋根を越すまでになった。ところが、カミキリムシが飛んできて幹に卵を産み、その幼虫が幹の中で育って樹を弱らせ、あれよあれよと思う間に樹が枯れてしまった。 がっかりしていたら、木の根の…

この世界、どうすればいいのだろう

「人間が、普段は法度になっている、みずからの残忍な衝動を自由に策動させ、最終的には殺人と死を奉ずるようになれば、いったいどういうことになるだろう。」 「フーコーは考える。『人はいかにしてファシストにならずにすませるか、それも自分自身を革命の…

子ギツネコンコン

我が家の前は、道路を隔てて秀武さんの水田。 昨日、秀武さんに玄米を頼んで、配達してもらった。 「いやあ、まいりましたよ。脊柱管狭窄症になって、痛くて痛くてi 「私も以前、狭窄症になりましたよ。」 「こうして体を前に丸めて、しゃがむと楽になるね。…

「静かなドン」の会話

1916年、ショーロフの小説「静かなドン」のなかの、塹壕の中での兵士たちの会話。 ドンはドン川、ロシアの大地を流れてアゾフ海に注ぐ。 「おめえ、説明してくれよ。戦争が一部のものをもうけさせ、他のものを破滅させるってことを。そのためにオレたちは死…

息子の紹介 心に残る出来事

息子から 「僕がよく見ているインターネットのサイトに、Quoraというサイトがあります。みんなの質問に、色んな人が答えるというサイトなんだけど、いい回答が沢山あるサイトです。そこで、『教養はなぜ大事なのか』という質問があって、その答えが心に残っ…