今朝の天声人語

 

    私は、中学生時代から七十余年間、朝日新聞天声人語」の読者である。この欄だけは読みとばさない。限定された字数には、言葉の力が如実に表れる。

    今朝の記事は水俣病患者団体との懇談で環境省幹部が、患者の発言中にマイク電源を切ったことについての論評だった。関連記事は今朝の他の紙面にかなり詳しく報じられている。

   「天声人語」は限定された字数で、事実や意見、感情を伝えるところに言葉の力が現れる。毎日この欄を読んで、「今日は記事に力があった」と余韻を感じる日もあれば、斜め読みをしてしまう日もある。昨日は、水俣病患者の問題だったから、しっかりと思いを込めて読んだのだが、「この言い回し、ちょっと冗長だなあ、切れ味がないなあ」と思う。「もし『申し訳ございませんの神様』がいたら、『微塵も思っていないのに言うな』と怒るのではないか。~」に続く表現、言葉が心に響かない。工夫がいるなあと、読みながら思った。真実を表現するということ、新聞記事の書き手は毎日それに苦心し、挑戦しているのだが、それが記事となったとき、「なんだこの記事は」という結果になってしまうことも多いだろう。真実を伝え、思索を促し、心に余韻を残す、香り高い文章、そういう記事を書いてほしい。それが読者の想いに寄り添う記者なんだと思う。