緑うるわし

 

 

 

 

 15年前、庭に白樺の木の苗を一本植えた。その苗は成長して、梢が屋根を越すまでになった。ところが、カミキリムシが飛んできて幹に卵を産み、その幼虫が幹の中で育って樹を弱らせ、あれよあれよと思う間に樹が枯れてしまった。

 がっかりしていたら、木の根の周りから、白樺の芽が何本か出てきた。こぼれ種が芽を出したのだ。

 その芽を二本、別の場所に移して植えた。その芽が成長を始めた。ところがまた、毎年カミキリムシがやってくる。注意深く木を見つめていると、ゴマダラカミキリの白い斑点が目にとまり、何匹かつかまえる。

 こうして二本の白樺は見守られて成長した。今や屋根を越して高々と枝を広げている。この文章を書いているところから、西窓越しに白樺を見る。樹は、幹回り50センチを超えている。白樺と並んで、ムクゲとヒメシャラがみずみずしい緑葉を茂らせている。この三本の樹が、西日をえぎり、これからやってくる酷暑から室内を守ってくれる。

 居間の南側には、ヤマボウシ。これも幼苗から育てた。見事に枝を広げ、こんもりと葉を茂らせている。この木は南からの夏の日差しをさえぎってくれる。少し離れて二本のハナミズキが、十メートル近い背丈で横に枝を張り、日差しを遮っている。

 

   したたる緑、ヨーロッパの大地も、緑の歌をうたっている季節。

 だがウクライナは、家も人も街路樹も破壊され焼かれつづけている。