先日、明石に住む息子が信州にやってきて、単独行で、上高地から蝶ヶ岳に登った。稜線に出ると、猛烈な強風に襲われ、風速、25メートルだったとか、ほとんど前進かなわず、吹き飛ばされそうだった。体を丸め、地を這うように歩いた。
息子は蝶ヶ岳から常念岳への縦走は断念して、上高地にもどり、徳沢園で幕営、
強風が収まってから穂高の涸沢に登った。最初は、奥穂高岳を目指していたが、時間切れで登頂できなかったという。
山道に直線はない。登山道は、徹底したジグザグ路、うねうねと曲線で出来ている。
目的地まで直線にすれば1キロであっても、山道になると3キロ、4キロになる。
自然界はすべて曲線なんだなあ。歩けば時間がかかるけど、それが自然との接触なんだなあ。
木も草も、石も、生き物も、
雨も風もすべて、
断続し、折れ曲がり、
山道はジグザグになり、弧を描き、
沢の水も、折れ曲がり、波打ち、落下していく。
曲線は心を落ち着かせ、心がなごませる。
だが、現代社会は直線の文化だ。自然界の摂理ではない。経済性、効率性、便宜性の産物、文明の都合による直線の産物。
その最たる悪は、戦争の兵器だ。
ミサイル、砲弾、爆撃機、
自然も人間も滅ぼし、地球を破壊する。
だが、体は欲している。心は求めている。
曲線の自然界、命の世界。
森に入る。木々を見つめる。野鳥の声を聴く。