ロシア革命の国の今

 

 さらに濱野成秋氏は著書で、こんなことも書いている。

 

 「大正時代、関東大震災のどさくさにまぎれて、無政府主義者大杉栄は、伊藤野枝とともに、甘粕大尉に虐殺され、井戸に投げ込まれた。

 大杉栄の『日本脱出記』は、大杉の遺作である。そこにこんな文章がある。

 

 ロシアの民衆は、その革命によって、まずツアル(ロシア皇帝)の虐政と地主や資本家の略奪とから逃れ出た。が、旧主人が倒れるか倒れないうちに、すでにもう、新主人の自選候補者どもが群がり集まってきた。火事場泥棒の山師どもの群れが、ゴマの蠅どもが、四方八方から民衆の上に迫ってきた。権力を追うあらゆる傾向、あらゆる色合いの政治狂どもが、自己の党派の覇権を握ろうとしてきた。みんな出来るだけ革命的な言葉を用意して、民衆の自由や幸福のためと称して、内乱のなかに入ってきた。

 しかし、山師どもの本当の目的は、この民衆対主人の内乱ではない。新主人の席の奪い合いなのだ。民衆対主人の内乱を、新主人どもの間の内乱に堕落させることなのだ。彼らの求めるところはただ、自分の党派の独裁、すなわち民衆の上の、権力の独占なのだ。」

 

 そして大杉はこう断じる。

 

 「‥‥略奪者を解放するのだと公言しつつ、容赦なく民衆を圧迫し、動員し、攻撃し、銃殺し、村落を焼き払う。そしてついに、いちばん狡猾で、いちばん凶暴な奴らが、クレムリン玉座に座り込んで、無産階級の独裁の名のもとに、いったん解放された労働者や農民を、ふたたび奴隷状態に蹴落として、完全にロシア革命を圧殺してしまった。これがいわゆるロシア革命なのだ。」

 

 100年も前の話だが、いまのロシアとその大統領の状況を見ると背筋が寒くなる。