モズが生垣に巣をつくっていた。生垣は三メートルほどの高さになっている。
アカカナメの樹が端に、でっぷり太って茂っている。そこからイチイがぎっしり並んで茂っている。モズはこれまでアカカナメの茂みに巣をつくっていた。今年は、イチイのきのなかに巣をつくった。
昨日、庭の畑の端に、動くものがあってそれが目の端にとまった。モズのヒナだ。
巣だったのか、だがヒナはピョンピョン、畑の端に積んである草のうえを跳んで、巣のある樹の方へ行こうとしている。
それを見つけた親鳥は、どこからかすいーっと飛んできて、ヒナの横に降り立ち、また飛び立っていった。
以前にもこういうことがあった。巣立ちはしたが、まだ飛ぶ力がない。そこで地面に降りて、移動する。そのヒナに、たぶん親鳥は餌をはこんでいた。今回のヒナも、まだ親鳥に餌を依存しているのだろう。親は常にヒナを呼ぶ。チチチチチチチチ、ヒナは、巣にいた時は、チュイ、チュイ、と間をおいて親を呼ぶ。しかし、巣立ちしたものの、まだ飛ぶ力が充分でないヒナが地面に降りてしまったら、外敵に襲われたら終わりだ。猫もいる。キツネもいる。カラスやトビもいる。
夕方、ヒナの姿も声もない。だが親は、チチチチチチチチ、鳴き続けている。
「巣へ戻ってきなさい」
と叫んでいるのだろうか。
「敵に襲われないように。夜を越す場所を安全なところにしなさい」
と叫んでいるのだろうか。
暗くなるまで、親鳥は鳴き続けていた。夜は雨が降っていた。
今朝、家の外に置いてあるエアコンの屋根にヒナが止まっていたが人影を見てぱあっと草むらに飛んでいった、と妻が言う。
生きていた、安堵した。
親鳥はまだ。チチチチチチチチ、と鳴き続けている。