2015-01-01から1年間の記事一覧

 戦記

新聞の「論壇時評」で、高橋源一郎が大岡昇平の小説「野火」について書いていた。「野火」の映画ができたらしい。今公開中だという。映画監督は塚本晋也で、彼は1990年代に映画化を志したが資金が集まらず、制作断念の寸前まで行った。それでも、監督自ら主…

 わが人生

一町ほど向こうをふらふらした足取りで家の方に入っていくHさんの姿が見えた。ぼくはランを連れた早朝のウォーキングの帰り道、Hさんは畑を見回って家に戻るところだ。それにしてもフラフラしているな、変だな。 H家に近づいて行くと、Hさんは道端の丸太に腰…

 昆虫少年

ブルーベリー畑のある家の前を過ぎて、小さな雑木林の方へ歩いて行くと、後から合図するように物音がした。ふりかえると、ボクがにっこり笑っていた。 「今日はプールがあるの?」 「うん、終業式だよ。その前にプールだよ」 左肩にかけているカバンらしきも…

 この夏、福島の子どもたちは安曇野で遊びに遊ぶ

8月、福島から親子たちがやってくる。原発爆発による放射能汚染のつづく福島から親子を招く保養ステイだ。日数はわずかでも元気が回復する濃縮プログラム。市民団体「安曇野ひかりプロジェクト」の恒例の行事は今年が四回目だ。企画は根拠地「安曇野地球宿」…

 庶民が声を上げるとき

昨夜はコーラスの会の「暑気払い」だった。地元の公民館で歌を少し練習して、それから「暑気」を払う宴会となった。ビールや料理は、イワちゃんが店に発注して、運んできてもらってあった。 団らんは、初めはなんということもない、身の回りのこと暮らしのこ…

 村野四郎「混む」

混(こ)む いつだったか ドイツの ケストナーという詩人が ――地球はおびただしい水道をもつ 文化的な星だ と書いたが 彼はいまや 言い直さねばならないだろう ――地球はおびただしいゴキブリをもつ 文化的な星だ と この遊星の季節は まったく彼らの増殖に適し…

 静かな憤怒

コウチャニュウ君が、映像のDVD記録を送ってくれた。コウチャニュウ君は海三郎君と同期、二人は同じクラスになったことはないが、半世紀たってから同窓の同志として現代社会に発信している。 コウ君が中学三年のとき、学級担任のぼくは学級弁論会を二回開い…

 あゝ おまえはなにをしてきたのだと

海三郎君から本が送られてきた。藤沢周平の作品について何冊もの評論を書いてきた彼、今度は「藤沢周平が描いた幕末維新」(本の泉社)だった。 「‥‥大変動の時代に人はどう生きたのかを藤沢作品にたずねる旅は、楽しいようでいながら、 ‥‥考えるに余る問い…

 市議会傍聴記(3)

再び「壁」について考える。 新市庁舎3階につくられた市議会議場の傍聴席前の「壁」、実際は壁ではなくフェンスの高さだけれども、議場を設計し施工させた人の心に「壁」があったのではないかとぼくは思うから、「壁」と呼んでいる。 「壁」は、議員を傍聴者か…

 子守唄で眠るラン

いい天気の日は、ランは庭で過ごす。気温の低い日は、日なたへ、カンカン照れば日陰へ、快適な所を選んで移動してはそこで日がな一日のんびり寝ている。 暮れると家に連れて入る。きれいに洗ったラン用のタオルで全身を何度も拭いてやる。炎暑に向かう今の季…

 市議会傍聴記(2)

いったいあの緊急動議とは、何だったんだろう。あの後、再開された本会議で何があったのだろう。 翌日、地方紙の「市民タイムズ」を見た。「安保法案慎重審議求める意見書1件可決」という見出し。あれっ、あの意見書は否決されたではないか、どうして? 記…

 市議会傍聴記(1)

昨日、安曇野市議会を傍聴してきた。6月定例市議会の最終日だった。 他に要件があったのだが、それをおいて傍聴に出かけたのは、今国会で審議中の「安保法制案」に対する意見書が議案に出されていたからだ。 午後、90億円かけて建てられた新しい市庁舎の3階…

 体に生き続ける戦争、その戦争に聞け!

70年前、死体を踏んだときの、ぐにゃりとした足の感触、その記憶が原因で自分の足に痛みを感じるようになったのは、年を経てからだったという。 沖縄戦を体験した人の記憶は70年たっても消えない。年を経てからその過去の記憶が足の痛みになってよみがえった…

 永遠の未完成

人生を振り返ってみて、 そして今、またこれから、何をなさんとしているか、そのことを考えてみて、 ほーっと長い溜息をつきながら思う、 すべては永遠の未完成であると。 人間すべてそうであろうし、人間集団がなそうとしたすべてもそうだと思う。 このこと…

 モヤシ

畑から人声がする。 案山子(かかし)が三体、思い思いの服装をして立っている。 右手にジョウロを持った案山子もいる。 日傘が三本、案山子から離れて、 これまた思い思いの場所に立っている。 一枚の畑の一角に支柱が並び、トマトが十本ほど、 緑の色を濃…

 忘れもの 

脚本化の倉本聡は今年80歳になったそうだ。 こんな講演記事が載っていた。 娘夫婦が富士山に登ってきたという。5合目まで車で行って、そこから登った。それを聞いて思った。我々は、文明が進歩して5合目が当たり前だと思うようになってしまっている。それを…

 芽を出すものたち

種をまいてから、毎日のように水やりしては、芽はまだかとのぞいていたが、それらしきものは見えなかった。アスパラガスは、そんなに発芽が難しいのかな、ひょっとしたら種がよくなかったのか、などと原因をいろいろ考えていた。種をまいてから三週間以上が…

 サッカー国際親善試合は対イラク

日本とイラクのサッカー試合をちらちらとテレビで観た。国際親善試合だった。あのイラクが試合に出ている。そういうことができるんだろうかと、不思議に思う。 なぜなら今も、イラク国内は戦場だ。ISと戦闘が続いていて、イラク国内でISの支配が広がって…

 モズの巣立ち

ミニ牛蒡の種をまいた。ミニと言っても根っこは50センチにもなると種袋に書いてあった。できるだけ高畝にしたが、それでも根が50センチも伸びると堅い土の層に突き当たるだろう。そうなるとゴボウの先端は曲がる、いやそれでも根は堅い土に入り込んでいくか…

 成熟から遠ざかる日本

「長い物には巻かれよ」という言葉を、敗戦から数年して、小学校の授業で聞いたときは、「ヘビに巻かれる?何のこと?」だった。慣用句で、目上の人や勢力のある人には争うより従っている方が得である、という意味で、それまでの多くの日本人は、権力者に逆…

 時代の現実を反映する短歌と俳句

新聞の短歌や俳句の欄を見ると、やっぱり時代が反映している。いい俳句や短歌を創ろうというのではなく、時代に生きるその人の、内からにじみ出る心の叫び。 いつだって正念場だけど沖縄はいま戻らねばと友は辺野古へ 原田りえ子 ふるさと沖縄が、作者を駆り…

家と樹が調和する、うるわしさ

家の周りに屋根を超す樹木があると、景色に潤いが生まれる。建物が裸にならず、木々に守られているこのような景観が、道行く人の心を和ませる。 古くからこの地に住んでいる人の家。養蚕農家だった。その家は今も使われている。高木が調和する。家の二階で蚕…

 種まき、苗植え

ツキヌキニンドウが咲いている。もらってきた古材でつくった柱のアーチに、モッコウバラと白薔薇がからみつき、今年はうっそうと茂って花をつけてくれた。その反対側からスイカズラ科のツキヌキニンドウがはいあがるが、バラの勢いが優っている。 サツマイモ…

 国民の知らないところで進められていること

秀さんが田植え機で稲を植えていた。速い速い。時速6キロぐらいのスピードで、10条ほどの苗が植わっていく。昔、家族総出、さらには親族から地域共同で、水田に一列に並び、手植えしていた時代は一日がかりだった面積も、今や数十分で終わってしまう。 スズ…

 種に見る日本

遅霜の心配がなくなり、昼間は夏日になる日が多くなった。野菜の種まきや苗の植え付けが一度にやってきて、いそがしい。 トマト、シシトウ、ピーマン、トウモロコシ、ナス、キュウリ、ルッコラ、ササゲ、ニンジン、コマツナ、ゴーヤ‥‥と植えて、まだこれから…

 政治家の言葉

写真:烏川渓谷緑地の事務所でみた鳥の巣 官房長官が、「辺野古の基地建設を粛々と進めるだけだ」と言った。 沖縄県知事は、沖縄県民の意思をふみにじる、上から目線の言葉だと怒った。 官房長官と知事が対話した。 「粛々はもう使わない」 と官房長官は言っ…

 今、日本はどこに向かっているのか <2>

安倍首相は「絶対にない」と断言する。 「米国の戦争に巻き込まれるのではないか、はっきり申し上げます。絶対にありえません。」 「自衛隊が、かつての湾岸戦争やイラク戦争での戦闘に参加するようなことは今後ともありえない。」 「絶対」という言葉は主観…

 翁長さん、143年間の沖縄の心を伝えられんことを

島尾敏雄の両親の故郷は福島県相馬郡小高町だった。九州大学の学生だった島尾は昭和18年に海軍予備学生になり、特攻隊要員になった。 1944年(昭和19)10月、震洋隊指揮官として奄美群島加計呂麻島に駐屯した。その特攻とは、ベニア板で作られた魚雷艇に乗り…

 今、日本はどこに向かっているのか

今朝、野歩きでカッコ―の声を聞いた。今年初めての声、五月野の緑のしじまに、カッコ―の声は遠くまでとどく。 憲法記念日に、石川健治(東大教授・憲法学)が、清沢洌(きよさわきよし)のことを書いていた。 明治の時代、小学校教師だった井口喜源治が穂高…

 不整脈

夜中に目が覚めた。なんとも名状しがたいこの感じ、苦しくはないが正常ではない、胸のあたりにぼやんとくる不快な圧迫感。不整脈だな。脈を診るとやはり脈が跳ぶ。 ここ三年ほど不整脈は克服したと思っていた。去年は蝶ガ岳、一昨年は常念岳にも登った。最後…