野菜の力


 おいしいトマトを今も食べている。夏の盛りから毎日のようにトマトとキュウリを食べてきたが、トマトとキュウリがこんなによく実り、こんなによく食べたのは生まれて初めてだ。トマトは歯科医の布山さんからいろんな種類の苗を十数本いただき、それはみんな布山さんが自分で育てた苗で、選りすぐりの品種だった。布山さんは、「安曇野を考える市民ネットワーク」の代表で、ぼくも一緒に活動してきた。歯の治療をしてもらいに行ったとき、布山さんは診療室からぼくを苗置き場に連れていって、これは何々でと一本一本トマトの名前と品種を説明してくださった。我が家に持ち帰って庭の畑に植えたときに根方に名前を書いた札を土に刺しておいたが、いつの間にか札がなくなった。トマトは元気に育って実をたくさん付けた。今年は、トマトの畝に雨を防ぐためにポリシートの屋根を張ったのもよかった。布山さんには感謝感激だ。布山さんは医師としてすぐれた働きをしながら市民運動に貢献し、自分で畑を耕して作物をつくり、薪を用意して冬には薪ストーブを焚き、ストーブから出てくる木酢液をネズミの被害防止用にと、いただいたこともある。彼はそこへもって遊びも積極的でスキーもベテランだ。


 一方キュウリは店で買った種から育てた。育ちに必要な条件が良かったらしい。夏の間毎日実がじゃんじゃん付く。最盛期には毎日十本以上採れた。食べきれず、ご近所さん数軒に何度か持って行っておすそわけした。食事が進まなかったミヨ子さんは、一時期弱気になっていたが、このキュウリがおいしくて、毎日食べた。キュウリがこんなにおいしいと思ったのは初めてだと言った。ゴーヤ、ピーマン、シシトウ、ナス、トマト、ササゲ、レタスなども見計らって持って行ったら、「野菜のおかげで元気になっただよ」と言ってくれた。先日、みよ子さんから電話が入った。お向かいなのに、歩くのがすこし難儀だから電話したらしい。
「甘酒を作ったから取りにおいで。」
「ありがとう、ミヨ子さんの甘酒は最高だよ。」
と返事して、もらいにいった。
「いつももらってばかりでお礼に作ったよ。この甘酒は本格的だよ。もち米、こうじを使ってつくったものだよ。甘さも自然の甘さだよ。」
 ミヨ子さんの笑顔が久しぶりだ。だいぶ元気になってきたなと安堵もし嬉しかった。