野沢菜を漬ける  


 近くにある希少な雑木林。希少というのは、まったくおかしなことだが、安曇野の田園地帯に、自然な雑木林がもう見当たらないのだ。だからこの小さな林のクヌギの木へ、夏の早朝にカブトムシやクワガタを捕りに来る子がいるのだが、すでに誰かが捕った跡があり、虫たちを見つけることはほとんどない。立冬が過ぎてから、その雑木の落ち葉が、はらはらと舞い散り、道路際に堆積して、水路を埋めている。ランと散歩するたびに、アスファルトの上に放置されたままのこの落ち葉がもったいなく思えて、熊手をもってもらいに行った。大袋に次つぎ入れて車で持って帰ってきた。次に、お向かいにあるヒデさんの田圃に一輪車を持ってワラをもらいに行った。米をコンバインで収穫した時に小さく切断したワラが田の中に一面に残る。それを熊手で集めて、これも大きな袋に詰め込んでもらってくる。これらを畑の畝間に詰めていって、春まで畑の布団になり、やがて有機肥料となる。ヒデさんの家から、米糠も三袋もらった。それからモミガラももらった。クルミのおばさんからも、モミガラをもらった。いずれも土に入れて、微生物を増やす。
 野沢菜を漬けることになり、畑から野沢菜を刈り取ってきた。漬けるのは洋子の仕事。漬け物容器を洗うために外に出すと、置いてあったところの下の地面に、ネズミの穴があった。まだ新しい穴で、早くも物置の外から地面を掘って侵入をしてきたことが分かった。またまた対策を講じなければならない。とりあえず穴を小石で塞ぎ、壁際の地面を鉄槌でたたくと、敷いてあった小石が、土の中にめりこむ。壁ぎわの小石を順にたたいていくと、ほとんどの小石を敷いた地面が陥没した。地面の下に巣穴があるようだ。土を小石で固めて、応急措置をとったが、根本的にはネズミ退治をしなければならない。
 洋子の漬けた野沢菜の上に、内蓋を入れ、その上に重石を置く。この重石は自然石でずっしりと重い。足腰が弱っているから、無理して持ちあげて、腰を痛めるかもしれないと、少し危惧したが、腹筋に力を入れて持ちあげて運ぶことができた。
 野沢菜が畑にたくさん残っている。マキちゃんに電話すると、ほしいというから採りにきてもらうことにした。キヨちゃんに電話すると、「大根を漬けたから野沢菜の漬物まで手が回らないの」という。お向かいのミヨコさんに聞くと、「ちょうだい、ちょうだい」ということで、持って行った。ミヨコさんは、それを短くじょきじょき切り、「軽く塩もみして、酢とざらめで漬けるよー、おいしいよー」」と言った。早漬けの野沢菜漬けだ。野沢菜はたくさん残っている。ご近所の二軒にも声をかけよう。