2017-01-01から1年間の記事一覧

 画廊カフェ

敬老の日に、村の合唱団「扇町コーラス」がデイサービスセンターで歌ってきた。高齢者40人ほどが座って静かに聞いてくれた。「いっしょに歌おう」の時は、7割ほどの人が声を出してくれた。歌っているぼくには皆さんの声は聞こえないが、口の開け方でその…

 目や耳に飛び込んでくるもの

昨夜、公民館の部屋でベトナム実習生に日本語を教えていた時、スタッフの三人が少し離れたところで雑談をしていた。こちらは教えることに集中していたから、雑談の中身は耳にとまらない。ところが、その雑談のなかから一つの言葉が耳に飛び込んできた。「ヨ…

 大岡昇平「俘虜記」と「野火」2 銃を捨てる

「野火」の主人公、田村は銃を撃って女を殺した。何故撃ったのか、そのことを作者はどう描いたか。 敗残兵の田村は山から下りて行って人家の中でフィリピン女性に出会い、マッチをくれ、と言った。女は田村を見て悲鳴を上げた。獣のような声で叫びつづけた。…

  大岡昇平「俘虜記」と「野火」 1 アメリカ兵を撃たなかったわけ

「私は昭和二十年一月二十五日ミンドロ島南方山中において米軍の俘虜となった。」と書き始める大岡昇平の小説「俘虜記」に、「私」が米軍兵士に遭遇した時、相手を殺さなかった心の動きについて書いている。 ミンドロ島はルソン島の西南にある。フィリピンの…

共存共生

畑を歩いて、今日は何を持っていけるかな、キュウリは二本、ピーマン一個、シシトウは二つかみ、ササゲ二つかみ、これだけあれば今日と明日の分になるだろう。ゴーヤは明日、もいで持っていこう。ナスはつやつやナス色に光っている。ピーマンもぴかぴか緑色…

 ベンチがほしい

今朝は五時半ごろ、ランと散歩に出た。小ぬか雨が先ほどまで降っていたが、ちょうど止んでいた。道は少し濡れている。西の里山には雲が低くかかっている。東の空は雲が高く明るい。傘なしでも大丈夫だろう。 出かける前に、左ひざのストレッチをしたから、痛…

 Jアラートが鳴り響いた

朝のランとの散歩で、半年ぶりぐらいになるか、Hさんに会った。黄色く色付いてきた稲が頭を垂れている。Hさんのつくっている畑には、里芋、秋ジャガ、キウリ、松本一本ネギ、ダイコン、ササゲなどいろんな作物が育っていた。その作物のどれもに、Hさんの…

 「もっと光を」

ゲーテは死の間際に、「もっと光を」と言った。この最期の言葉が世に知られるようになって、人のその時の想いとして独立して発せられたりもする。 ぼくの中学校教員時代、最初の卒業生の正明君から、大きな文字で「もっと光を」と書かれた年賀ハガキを受け取…

 ベトナム人実習生たち、富士山に登ってきた

日本語教室へ日本語を学びに来ているベトナム人実習生たちが富士山に登る計画を立てていたから、登山や山の知識を教え、計画実行上のアドバイスをしてきた。高度100メートル登れば何度気温が下がるか、風速1メートルの風が吹けば体温が奪われる、体感温度は…

 今年も福島の子らのキャンプ 2

五日目、福島の親子は帰途につきました。まったく天候が不順で、快晴の日は一日もありませんでしたが、子どもたちは元気で、雨の止んだ時や小雨の時には、虫取りや川遊びに出ていって、すっかり森の子、川の子です。野性の環境に置かれた子どもは、野性を自…

 今年も福島の子らのキャンプ

第6回目になる福島の親子を招くキャンプが14日から始まりました。いつものとおり、地球宿がベースキャンプで、どあい自然公園の「どあい冒険くらぶ」が幕営地です。 あいにく天候が雨模様ですが、黒沢の谷に子どもたちの元気な声が響き渡っています。15…

 ゴミ当番

今朝はゴミ当番だ。7時から8時の間にゴミ集積ステーションへ村の人たちが持ってくる「燃えるゴミ」の袋を見守る。盆だから量が多いようだ。当番はトシ子さんとぼくの二人。 根っからの農婦のトシ子さんは、やってくる人やってくる人と、陽気に声をかわす。軽…

  道の思想

ローテンブルグの小川 この猛烈な日照りの中、犬を連れて散歩する人はいない。人間よりも犬の方が道路に近い。熱の照りかえしをもろに受ける犬は熱に焼かれてしまう。ランとの散歩は朝の4時代、5時ごろからで、6時になると太陽はすでに東山を離れて高く上…

 ソロー「森の生活」 4

「すべての人びとをして、自らの仕事に専心せしめよ。そして本然の自己たるべく努力せしめよ。‥‥」 つづいて鶴見俊輔の名訳の部分に至る。 ところで、宮西豊逸訳の上記の部分の入っている段落の最初は、1995年に出版された飯田実の新訳(岩波文庫)では、ど…

 ソロー「森の生活」 3

ソロー「森の生活」の一節を、鶴見俊輔さんが名訳した『太鼓の音に足の合わぬ者をとがめるな。その人は、別の太鼓に聞き入っているのかもしれない』。 では、その一節は、「森の生活」のどのような文章のなかにあるのだろうか。 「森の生活」の終章、「結論…

  ソロー「森の生活」 2

ぼくの持っているソローの「森の生活」は、1950年に出版されたもので、宮西豊逸の訳である。戦後数年の物資のない時期だから、紙質は悪く、今ではボロボロに分解していて印刷の字も見えづらい。この本はどうしてぼくのところにあるのか、たぶん奈良の金剛山…

  ソロー「森の生活」 1

「カッコ―の鳴いている間は、豆を播いてもいいだよ。」 クルミの木のおばさんからそう聞いて、今年は芽の出ないたくさんの箇所に何回も黒豆を播き直した。この表現、いいなあと、心がほっと温かくなった。発芽の日のまちまちな畑だが、それでも今は9割芽を出…

 ネイティブ・モンゴロイドの言葉

いっさいのものは、相互に依存しあって生きている。ネイティブ・モンゴロイドに広く共通する聖なる伝統の認識である。 北米大陸の北に、マリシート族という、自分たちの言葉を持ったネイティブ・モンゴロイドの一部族がいる。彼らは狩猟の民である。この部族…

 先回りした服従

「ドイツには「フォラウスアイレンダー・ゲホルザム」という言葉があります。忖度(そんたく)と同じように、訳すのは難しいですが、直訳すれば先回りした服従という意味です。なぜ、ホロコーストのような大量虐殺が起きたのかを説明する際によく使われます。…

 小さなものたち

これまでもう何年も花が咲かなかったガクアジサイが今年は花をつけた。これまで花をつけないから、いろいろ株に手を加えてきたものの、効果がなかった。ところが今年は、何が変わったのか、花をつけた。何がそうさせたのだろう。ヤマアジサイは毎年順調に育…

 公共交通から未来を考える

マイカー社会になって、ほとんどの人が仕事も買い物もマイカーで行く。安曇野の乗合バスはとおに乗客が減り消えてしまった。 そうしてマイカーを持たない高齢者の足がなくなってしまった。89歳のミヨさんは、マイカーを離せない。医者へ行くのも買い物も、…

 『うさぎ追ひし かの山』

一昨日、「扇町コーラス」は地元のデイサービスセンターで毎年恒例の合唱をしてきた。 センターには30人ほどの高齢者が、椅子を並べて「扇町コーラス」を待ってくれていた。「扇町コーラス」のメンバー15人がその前に立って、最近練習している二曲を歌ってか…

 ネズミ退治

二日前に久しぶりの雨が降って、やっと乾燥した畑がうるおった。まいた黒豆が少ししか芽を出していないから、もう一度芽の出て来ないところに種を播いた。そこへ雨が来たから、これで何とか新しい芽が出て、いくらか収穫できるかな。 今年は梅の実がたくさん…

 「夏休みを10日間にする」という記事

今朝の新聞に「夏休みを10日間にする」という記事が出ていた。 まさか!何を考えている!という思いが噴き出して記事を読んだ。 静岡県吉田町では、来年度から小中学校の夏休みを最短で10日間に短縮する方針を決め、19日夜から保護者への説明会を始めた…

 雨が欲しい

黒豆が、播いた種の3%ぐらいしか芽が出ていない。かなり日数が経っているのに。去年までは、一斉に芽吹いていたのに。 芽の出る時間差は当然あるが、今年の芽の出方は、差が大きすぎる。雨がなく、土の乾燥が進んでいるからかなあ。 そこでこの二日前から…

  ⑧  二つの出来事

<第一話> ぼくらは並んで公園を歩いていた。ぼくは両手にストックを突いている。 「財布、うしろのズボンのポケットに入れてない?」 洋子が聞いた。 「うん、うしろポケットに入れている。」 「後ろの二人組、さっきポケットに手を伸ばしていたよ。私が見…

  ⑦ 鳥の歌

トレドのカテドラル前の路上でチェロを弾いていたChiki Serranoから買ったCDの最後の曲は、カタルーニャ民謡『鳥の歌』だった。この歌を聴いてほっと心が安らいだ。 『鳥の歌』を初めて聞いたのは、カザルスの演奏を録音したCDだった。その演奏は1961年11月1…

    ⑥  この国の人びと

「ガウディ通り」の散策路に置かれたベンチに座って、道行く人々をなんとなく眺めていた。さわやかに晴れ、プラタナスの木陰は気持ちよい。街路の真ん中に泉水があり、鳩が飛んで来て水遊びをしている。街路や公園に、座りたいなと思う時に座れるベンチがあ…

   ⑤ 「サン・パウ病院」

宿が「サン・パウ病院」から道路を隔てたところにある。旅に出る前に、「サン・パウ病院」が世界遺産であるということを知ったものの、いったいどんな病院なのか、なぜ世界遺産なのか、肝心のことは何も知らないままに出かけた。バルセロナでの第一夜が明け…

  ④ ストリートミュージシャン・辻音楽師

「辻音楽師」、現代は「ストリートミュージシャン」、そのイメージがすっかり変わった。 まずはマドリードの王宮の前庭、人通りは少ない。かすかにアコーデオンの音色が聞こえた。まぎれもないアコーデオン、音色を聞き間違えることはない。音に誘われ木々の…