新しい山


   夜明け、
   白い峰が西の空に立ち、
   輝く、
   常念。


   今まで見てきた常念岳とは違う
   新たな常念を見た。
   頂上から雪煙があがり、
   南に流れて空に消える。
   森の上に白いすそを引き、雪の山ひだを折り、
   光るものあり、
   新しい山を見た。


   新たな常念は、神さびる常念、
   心が見た常念。
   氷点下の野の真ん中で、耳は凍えて痛い。


   臼井吉見が小学生だったとき、
   朝の全校朝礼で校長先生が子どもたちに言った。
   「常念を見よ」
   「常念のように」、
   朝礼の度に、それしか言わない、
   「常念岳を見よ」
   「常念のように」。


   今朝見た、神さびる常念。
   神さびる常念を見た瞬間に、
   その先生の想いが
   分かったと感じた。
   ぼくの感じた納得が腹に落ちた。


   仕事からの帰り道、
   西の山あい遠く、
   波打つ山塊は、
   なつかしい、
   ああ、乗鞍岳
   夕映えのなかの雪の峰、
   乗鞍にも、
   聖なる山を見た。


   「常念を見よ」、
   「常念のように」、
   見続けて発見をした人なれば、
   子どもらに言えた言葉。


   樹を見よ、
   鳥を見よ、
   空を見よ、
   そこにも、
   新たに感じるものがある。
   発見するものがある。