正之さんからメールが届いていた。
地球宿で開かれた、小さな同窓会。
薪ストーブが燃え、背中のほてりと飲む酒と、
ぐつぐつ煮えるアイガモ鍋。
青年農夫のタカオ君がさばいたアイガモ刺身に舌鼓を打ち、
十数人の老いたる同志たちは朝の3時半まで語り合った。
一睡の後、彼らはまた茫々たる現実の街へ帰っていった。
正之さんはマンションの管理人をしながら、小説を書いている。
少年期から学生期までの波乱と苦悩、幸福社会を夢見て実践に生きた創造期、夢去り海辺の町で小説を書きながら暮らす孤独な今、
「逝くまでに、その人生を小説に完成してほしい。」
戦後日本の歴史を背景に、志を抱き、理想を描いて、
そこに真実の人間の生き方があると、
現実社会のしがらみを解き放って集ったヤマ、
そこから再び混沌の現実社会に、
その小説完成が正之さんの使命だとぼくは焚き付けた。
正之さんのメールは、いかにも彼らしい。
あれはなんだったの?
長い帰りのバス旅で疲労のあとが歴然だけど
一点どこか冴えている部分が問う
ひとつのちいさな同窓会が終わっただけ
しかしどこかヘンにちがっていた
いじけた前科者たちが思いっきり羽を伸ばしていた
彼らもかつて公然と若さを謳歌していた
その大昔の若者たちに
宿を提供したのはいまの若者たち
蒼然たる古民家の天井の梁の下で何かを伝え
何かが伝わった伝承のセレモニー
過去からの鈍い逆光を未来へと継ぎ足し 輝かせていく営みが見える
総括とはつまりついには一人で果たされぬもの
世代にわたってこそ果たされ
老いた戦士たちが安らかに追悼される
それでも問い直す あれはなんだったの?
ひとつのちいさな同窓会が終わっただけ