自然界の適期


これも適期遅れだな、と思いつつ、ぼくが種から育てた紫タマネギの発育不十分な苗を今日定植した。
やはり種から育てた黄色タマネギの方も一昨日定植したが、プロの倉田さんにいただいた苗に比べると小さかったけれども紫のよりは大きかった。
黄色と紫は同時に隣同士に播種したもの。
種類の違いが発育の違いになったのか、それとも苗床の土の違いか、肥料分の違いか。
すでに霜が毎朝降りている。
ヒデさんと朝の散歩で一緒になったとき、タマネギの定植のことを話すと、ヒデさんは、
「定植はここ二、三日ですね。」
と言った。
「まだ我が家のは小さくて。」
と言うと、
「あまり育ちすぎているのは、春に徒長することが多いから、小さくてもいいですよ。」
とのことだった。
それからもう一週間経っている。
この一週間の遅れはどういう意味を持ってくるか。
それが次第に分かってきた。
今日の日中は珍しく暖かかった。しかし11月の天候は真冬に向かって、急転直下だ。
なにしろ日の出は6時過ぎてから、日の入りが4時半過ぎ、日照時間が夏と比較すると5時間ほども少ない。
おまけに我が家の畑には建物が影を落とす時間がある。
建物の影は、ぐっと北へ伸びている。冬至の頃が最高に伸びる。
そして最近は夜は0℃前後、毎朝霜、土は冷えている。
この条件で定植して活着するのは時間がかかる。育ちの遅れは春にどのように現れるだろう。
種まき適期、定植適期が、ある限定される日になってくるのはそういうことなのだ。
気象条件をよく見て、決定していく必要があるのだ。


紫タマネギを定植していたら、赤トンボが右の手首にとまった。
しゃがんでいるぼくの顔のすぐ前にトンボの目玉があり、きょろきょろしている。
かわいいねえ、おまえ、そこあったかいかね、
ぼくは右腕を動かさないで左手で苗を植える。
すると、トンボは左腕に飛び移った。
肩に止まり、頭に止まり、ぼくの身体があったかいね。


畝立てしていたら、カエルが飛び出した。
冬眠してたのにね、すまんすまん、
つかまえて別の土に入れてやった。


モンキチョウが舞っている。
今日は温かいからね。
それにしても零℃の夜はどうしていたんだい。
おとといの暴風のときはどこに隠れていたん?


あれまあ、アリが歩いているじゃないか。
そこにもここにも、
温かいからねえ、今日は。
こういう日は、穴から出てきて餌を探すんか。
よく働くねえ。


無線放送が入った。
近くで熊出没、
寺の柿の木に二頭の熊が上っていた、気を付けてくださいという知らせ。
熊も必死だ。
食べ物が山にない。
今年の猛暑で、木の実が少なかった。
餓えた状態で冬眠が出来ない。
もうすぐ12月だよ。
里に出てでも何か食べ物がほしい。
冬眠適期が過ぎる。
難民熊を救え。