気がつけばファシズム


 原発被災地から他の都市に避難している人たちに対して反感を持つ人が出てきており、「被災者は帰れ」という落書きがなされている。帰りたくても帰れない人たちの存在をやっかいなものに思う人がいるらしい。震災直後は被災者を助けようとして受け入れた地域だ。そのなかから、いつまでも帰らない被災者に違和感を持つ人が出てきて、このような行動を起こしている。原発の加害者のほうへ目が向かず、被害者のほうに反感が向いている。
 「韓国人は国へ帰れ」「朝鮮人を殺せ」と叫ぶデモが起きており、彼らの叫ぶ「ヘイトスピーチ(憎悪表現)が、国会でも、「日本人の品格として恥ずべきこと」として取り上げられている。この動きに参加している人たちはある団体の呼びかけで動いているらしい。「日本近現代史」の知識の欠落を認識せず、偏狭な攻撃的「擬似ナショナリズム」を鬱憤のはけぐちにしている。
 政府は、4月28日を「主権回復の日」として記念式典を開いたが、沖縄では抗議集会が開かれた。最近、沖縄に対する県外民の感情が変わってきていることを感じる。本土の主権回復は、沖縄・小笠原・奄美という少数派の主権喪失と引き換えに実現した。沖縄の戦後史は、主権を失ってしまった住民による主権獲得のための抵抗の歴史だった。復帰後も米軍基地があり、戦後の「アメリカの戦争」はそこを基地にして行なわれた。沖縄に住みながら基地内の祖先の墓に自由にお参りもできない人たちもいる。沖縄に住みながら沖縄に帰れない。
 沖縄が犠牲になることを強いて当然とする本土の人間たちの意識が無言の圧力となって沖縄県民にかぶさっている。

 「経済を回復させ、強い日本を取り戻そう」、そのために、原発も必要だ、基地も止むを得ない、領土問題では断固戦う、憲法も変えよ、「国難」と戦うために犠牲は受け入れよ、棄民も止むを得ない、国策に反対するものは非国民だ。
 沈黙し、右にならえし、気がつけばファシズム