シモン芋と木のサッシ

 道志村の幸雄さんが送ってきてくれたシモン芋はおいしかった。洋子が料理してくれたのは、最初はサラダ。シモン芋を切ってルクエに入れ、電子レンジでふかし芋にしてサラダにしてくれた。その味、まさにジャガイモとサツマイモの中間、ジャガイモサラダに似て甘みがあり、けれどサツマイモほどの甘さがない。一口食べて、「おいしい」という言葉が出た。
 次は天ぷら、シモン芋の天ぷらは、サツマイモの天ぷらほどのほくほく感はないが、やわらかさがある。三つ目は、味噌汁の具。小さくきったシモン芋が抵抗感なく、口当たりがいい。
 これはおいしい。それでいて血液サラサラにしてくれて、健康によい。
 芋は一個がどでかい。巨大なサツマイモ並みだ。一個をリンゴの伐採木をもってきてくれた秋雄さんに、もう一個を巌さんにおすそわけした。巌さんは、2年前心筋梗塞になりかけたから、紹介しておこうと思った。持っていったら、ちょうどガレージで10時のお茶をするところだった。
 「なかなかおいしいんですよ。それに健康の素だし、今年ぼくもつくってみようと思ってるんですよ」
 巌さんも大いに興味を示した。
 幸雄さんが同封してくれていた説明文のコピーを渡し、
 「1回作れば3、4年分の土の肥料分を吸い取ってしまうと書いてありますね。だから、堆肥をたっぷり入れた苗床を作っておく必要がありますね」
 「そうだね。有機肥料だね。やっぱり健康は食ですね」

 巌さんが持ってきてくれた木の障子の廃棄物を、活用していろいろ細工物に使っている。今作っているのは、取り外し自在のひさし。障子の木のサッシを台に、ポリカーボネートの波板を貼り付けると雨除けのひさしになる。昨年つくった、ヨシズを載せて夏の直射日光避けのところにこのひさしを取り付ける。冬には取り外すようにつくる。 
 完成すれば、一足先に完成させた、同じく廃棄建具の木材で作ったウッドデッキが雨に濡れなくてすみ、さらに夏のカンカン照りが防げる。
 古くなった木のサッシはいまはどんどん処分されて、アルミサッシに変っている。その不要物になった木のサッシをぼくはたくさん貰っている。木のサッシは活用価値が高いから楽しみだ。
 けれども、古い木の建具が破棄されるという状況はいびつな日本の文化だと思う。巌さんには、この冬、その廃棄建具でぼくはベンチを作って贈った。巌さんは大喜びだった。古家を購入して引越しをしてきた圭君に、テレビ台をつくって贈ろうかとも思っている。