ジャガイモ


 「ひさしぶりです」
 「ひさしぶりさね」
 「この冬、全然姿見えなかったですよ」
 「朝起きるのがおそかったからね」
 「夜が明けるのがおそかったからですね」
 「今は、4時50分ごろ明るくなってきたからね。明るくなったら起きるで」
 「太陽に合わせた生活ですね。そうそう、シモン芋って知ってます?」
 「いや、知らんね」
 「ブラジル原産の芋でね。健康にいいらしいですよ。最近もらいましてね」
 「そうかね。知らないね。ジャガイモを主食にしている人は長生きするだよ」
 「ドイツはジャガイモが主食ですね」
 「ドイツ人の長生きの最高は140歳を超えていたね」
 「ジャガイモはいいですね。まんずおいしい」
 「私はジャガイモはもう植えたよ」
 「そうですか、私はまだ。今日植えます」
 カカシのおっちゃんとの朝の会話。おっちゃんは農業のかたわら元町役場の職員だった。いや、その逆かな、元町役場の職員のかたわら農業をやっていた。今は農業一本。あちこちにカカシを立てまくっている。ヘルメットをかぶった元全共闘のカカシもある。
 今年買った種芋の種類は「男爵」と「きたあかり」。一昨日、大きい種芋は包丁で二つに切って灰をまぶして置いてある。植える畝には元肥えに発酵鶏糞を入れた。今日は一日、ジャガイモ植えだった。畝の真ん中に深い溝を掘り、そこに施肥する。肥料の上に土をかぶせ、芋を25センチ間隔で置いていって、20センチほど土をかぶせる。植えていたら、一羽のカラスが2メートルほど離れたところに来て、見守っている。虫かカエルかが出てくるのを待っているのだろう。
 昨年採れたジャガイモ、今は芽がにょきっと出ている。芽をとって、皮付きまるごとふかして、朝食に小さなのを2個食べる。このふかしジャガイモ、素朴でおいしい。
 例のドイツ文学者・小塩節が「ドイツに学ぶ自立的人間のしつけ」(あすなろ書房)で、こんなことを書いていた。

 <ドイツのジャガイモはべとつかない品種で、実に多様なジャガイモ料理は、正直言って日本で想像するよりはるかにおいしい。丸のままゆでて肉や魚に添えたり、皮ごとオーヴンで焼くのもいいが、ドイツ人が好きなのは、いったんゆでたものを薄くスライスし、フライパンでバターでいためた「ブラート・カルトッフェルン」というものだ。キツネ色にわずかに焦げ目のついたものは、それこそほっぺたが落ちそうにうまい。サツマイモはない。>

 今年は去年以上にジャガイモがたくさん採れそうだ。植えた種芋の数がこれまででいちばん多い。
 今日夕方、初ツバメを見た。

 暖気にだまされて初ツバメ到来。気温は夕方から低下。ツバメ君、早く来すぎましたぞよ。