アカマツ枯死対策で農薬空中散布


 光城山に登ってきたことを、同僚のSさんに話した。土石流災害の危険があることを話したら、認識が一致した。Sさんは豊科在住で、理科の教師、光城山のことはよく知っている。
 「初めて登って、よくあの山の危険が分かりましたねえ。そうです、土石流の危険があります」
と、しきりに感心していた。
 山の下まで住宅地が迫っている。その山は、十分森が育っていない。たくさんの木々の根がしっかりと急斜面に根付いて山の崩壊を食い止めるのだが、見た目には疎林で、これは危ないと思う。
 マツクイムシによるアカマツの枯死が進み、枯れたアカマツの伐採が行なわれているが、根を張る樹木がきわめて少なくなっている。広葉樹の高木がないということは、以前がアカマツ林だったからだろうか。痩せた山に、根を張る広葉樹が少ない。地球規模で気候変動が激しい現代、かつてないほどの大雨が来る恐れがある。危険だ。根を張る木を植える対策を早急にとらなければならない。
 Sさんは、
 「先日市長が、光城山を高遠の桜に負けないほどの桜の名所にする、そこで桜をたくさん植えると言っていましたよ」
と言った。桜を植えるのは結構なことだが、「木を見て山を見ず」になっていないか。「アカマツを見て、山を見ず」、「桜を見て、森を見ず」。
 安曇野市議の小林純子さんが、松枯れ対策の市のやり方と市議会の議員の認識のことをブログに書いていた。要約すると、

 <拡大する松枯れ対策として「6月中旬に有人ヘリによる特別防除をする。明科の潮沢地区と豊科田沢の大口沢地区の2カ所。潮沢はマツタケ産地で、急峻な地形。大口沢では昨年行った無人ヘリによる散布では間に合わない松林を検討中」と安曇野市は説明していたが、大口沢地区では農業用水の水源があり、空中散布はできないことが確認された。潮沢地区の山林では、絶滅危惧種ノスリ(タカ科の鳥)が生息している可能性があり、調査が必要。ノスリが営巣しているようなら、空中散布はできない。4月2日に現地視察した時、低空飛行するノスリの姿を確認。
 ところが市議会議員が全員で協議する会で、「薬剤の空中散布の推進を市行政に要望する」という政策提言をすることになった。
小林議員が、「農薬の空中散布が松枯れに効く」という確証はないことや、「農薬を空から無差別に撒くことの危険性」を訴えても、
安曇野から松が消えてしまったらどうするんだ。思い切って空中散布で抑え込むしかない」、
「田んぼや畑に農薬を撒いているのだから、国の基準に合った薬を使って危険なはずはない」、
「県の空中散布の指針に従えば、市内には空中散布できる場所はほとんどないというが、ならば市独自にやることを考えたらどうか」、
「今ここで空中散布しないと松は全滅だ」
等々の意見が市議たちから出た。
議長は市議会の考えとして、薬剤の空中散布の推進を提言するつもりらしい。再検討が必要だ。>

 これが市議会。議員はそういう実態なのだ。現場を見ていない人の言いそうなことだ。どうしようもない。

 我が家にプラムの木が3本ある。ここ二週間ほど、白い花が咲いている。だが、花粉を運んでくれるミツバチやハナアブの姿が全く見られない。近くに住むSさんはニホンミツバチを飼っている。ミツバチが激減したと嘆いていた。虫はどこへ行ってしまったのか。空中散布する農薬は蜂類に大きな打撃を与える。それが原因で、昆虫が激減してしまったとしたら、それこそ森の木々も少なくなってしまう。
 ひょろひょろと一本立ちするアカマツ、先端部分に葉が生えているだけの木、その樹木を守ろうとして、ヘリコプターで薬品を散布し、全体の生態系を破壊する。
 「木を見て山を見ず」を、いまだ繰り返している。