ゴミ当番



 今朝はゴミ当番だ。7時から8時の間にゴミ集積ステーションへ村の人たちが持ってくる「燃えるゴミ」の袋を見守る。盆だから量が多いようだ。当番はトシ子さんとぼくの二人。
 根っからの農婦のトシ子さんは、やってくる人やってくる人と、陽気に声をかわす。軽トラックで持ってくる人、乗用車で持ってくる人、自転車で持ってくる人、歩いて持ってくる人、12年ここに住んでいるが、初めて見る人がたくさんいる。
 折りたたみ椅子を集積場の前に置き、トシ子さんと並んで座って話を始めたが、トシ子さんは来る人来る人と声をかわすから、ぼくとの会話は途切れっぱなしだ。ゴミをもってくる人は女性が多い。
 最初に来た人とは今年のトウモロコシの出来の話題になった。ひとしきりトシ子さんは昔の人の好んだトウモロコシに比べてこの頃の人は柔らかく甘いトウモロコシを好む話題を展開し、次に来た人とは、梅の実の活用方法、梅酢の作り方の話。次はトマトの話。ジャガイモの話。
 作柄、作り方、品種、料理法、味覚、話は来る人来る人との間にめまぐるしく変化する。その変化をトシ子さんは見事に切り分けて、相手に対応していく。地元の土地言葉、「ズラ言葉」も出る。土壌消毒の話では、
「わたしは、簡単にやるだよ。春先に畑に農業用水を数回張るだ。一回だけでは菌は死なないよ。三回ほど水を張るだ。」
 土壌殺菌に薬も黒マルチも使わないよ。
「今年はジャガイモの出来が少なかったね。」
「そうかあ、トシ子さんの畑もそうだったのかあ。ぼくの植えたジャガイモは三種類だったけど、面積の割には量が少なかったねえ。」
「どんな植え方をした?」
「えっ? そりゃ穴掘って種イモを掘りこんだ。」
「肥料は?」
「鶏糞と苦土石灰を前もって入れましたよ。」
「ジャガイモには苦土石灰はいらないよ。酸性でも大丈夫だよ。石灰を入れると、イモの表面にぶつぶつができるよ。」
「そうかあ。さっき梅の話で、熟して落ちた梅の実をジャムにしたり梅酢にすると言ってたけど、落ち梅は使えないと聞いたけど。」
「そんなことないよ。私は落ち梅を全部使うよ。」
 この人の話、このまま置いておくのはもったいない。なんとかできないかなあ。
「トシ子さんの頭の中に詰まっている宝物を、いつか取材させてくださいよ。」
「いいだよ、いつかね。」