労働力をどうするか


      労働力をどうするか  


日曜日の夜は、「国際フレンドの会」日本語教室へ夫婦で教えに行く。
場所は公民館、スタッフは五人。
生徒は、十数名いるはずだが、いつも来るのは八人ほど。
完全な無償のボランティア活動だ。


生徒は、中国から三年間の出稼ぎで来ている「青年研修生」と、日本人と結婚した年配の女性たち。
教えることと学ぶことの関係のなかに生まれてくる心の通い合いが活動を支えている。
ぼくが今マンツーマンで教えている人は、すばらしい理解力をもっていて、
日本語能力試験一級取得を目標にすえた。
中国から来る技術研修生は、実質は出稼ぎなのだが、中国で最低限の日本語指導を受けてやってくる。


彼らの賃金は、月に5万円から6万5千円の間。
二年目から夜遅くまで残業をして、10万を越えるところまで行く。
これを時間給で見れば、300円から400円。
宿舎などは企業が提供している。
生活を切り詰めて金を蓄え、三年後に故郷へ持って帰るのが彼らの夢だ。
一円でも安いものを買うために、特安の品を見つけにスーパーへ行く。
蓄えた金は、人民元と円のレートが違うから、中国へ持ち帰ると額が増大するわけだ。
企業のなかに悪どいのがあり、労働基準法に違反し、人権無視の事業主もいる。


日本に働きに来る外国人は、アジアの諸国から中南米にまで広がっている。
今、日本の中小零細企業の多くが、安い労働力を外国人労働者に依存している。
それによって、なんとか生き延びようと。
日本人を雇うよりも人件費が安く、まじめに働いてくれる。
搾取と言われようが、彼らにとっては好条件なのだ、と。


青島にいたとき、日本で三年間働いて、中国へ帰ってきた青年が話してくれた。
四国の食品加工の零細企業で働いていた。ところが企業が一年目で倒産した。
帰国しなければならないという土壇場で、
彼らを受け入れた組織が、別の企業を見つけてくれて、移ることができた。


この問題は、日本人の雇用とも関係してくる。
「日本人の雇用が少なくなるではないか。」
「しかし、日本人は、単純作業や汚れ作業や肉体労働に低賃金で就こうとするか。」
「その外国人労働力の低賃金が、日本人の労働条件をも引き下げることになるではないか。」
「日本経済の問題は、そんなところにないだろう。グローバリゼーションのなかに問題がある。」


ヨーロッパで外国人移民労働者と国内の労働者との軋轢が問題になっている。
国の経済を支えてきた移民が、差別され排斥されようとしている。
貧困や差別が治安の問題を引き起こす。
それが元で偏狭なナショナリズムが台頭する。
「来てくれ」、「来るな」、「出て行け」。


国連リポートでは、少子高齢化の日本では、
64万7千人の移民受け入れが必要となるという。
なんと膨大な数字だ。
その労働力をどうする?
いちばん肝心なことは、生じてくるテーマを、事実に基づいて理解し、
解決に向けての賢明な道筋を編み出していけるかどうかだ。
賢明な道筋とは何?