遅刻


        遅刻


高野街道をずうっと走ってくる女の子、
もう八時半を過ぎている。
遅刻だな、それで急いでいるんだな。
おはよう、いってらっしゃい。
おはようございまーす、
女の子は声をぽんと落として走っていった。


今日は土曜日、部活かな。
女の子はあせっている。
遅刻するよ、はやく、はやく。
みんなが待っている、はやく、はやく。
部活がはじまる、はやく、はやく。


肩から大きな白いかばんを提げて、
防寒ズボンをはいて、
息を切らし、一時も止まらず走り続け、
田んぼのなかの一本道の向こう、
米粒のようになった彼女は中学校の門を入っていった。


過疎化の進む村の学校。
子どもの数は少ないが、校舎はどかんと大きい。
朝の校門は、大きく両側に扉を開いている。
子どもたちを迎え入れようと、
校舎もグランドも子どもを待っている。
そこは友だちの集まってくるところ、
友だちと自由に、自分を開き、自分を伸ばす。
自分たちの社会をつくり、自分たちの世界をつくる。


学校はわたしを拒絶しないから、わたしは学校を拒絶しない。
学校はわたしを拘束しないから、わたしは思いきり笑う。
わたしはわたしたちの活動をつくるから、わたしは協力の楽しさを学ぶ。


大きく扉を開いて、子どもたちを待っている朝の校門。
拒絶をしない校門。