1996年出版の、手塚治虫著「ガラスの地球を救え」は、彼の遺言でもあった。
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「大宇宙の暗黒の中に、青く輝く水の惑星、それが人類のふるさと、地球なのだ。水と光と緑の大地に育まれて、数知れぬ生き物が生命を輝かせてきた地球。
46億年というとてつもない、はるかな時間を生きてきた地球。しかし人類が誕生してからは三百万年しかたっていない。人類は今やわがもの顔で、欲望のおもむくままに、自然を破壊し、生き物を殺戮し、地球資源を収奪しつづけている。
悪らつな権力者は、金儲けのためなら平気で毒物を垂れ流し、殺人兵器を製造し、使用している。そしてそういう状況を普通の国民が支えているのだ。
私たちは、欲望のままに物資の豊かさを求めて、わき目もふらず、突っ走ってきた。人類はいまだ野蛮時代なのかもしれない。月着陸を果たし、宇宙ステーション建造がどんなに進もうと、環境破壊や戦争をやめないかぎり、人類は野蛮というほかない。
ガラスのように壊れやすい地球。それなのに人類は、核戦争が起きようが、汚染が進もうが、しかたがないでいいのか。
人類滅亡は、もうフィクションの世界ではなくなってきている。どんな国も、それぞれ”正義”を振りかざして戦争してきたし、今もしている。”正義”とは実に便利な言葉で、国の数だけ、あるいは人間の数だけあると言えるだろう。 その”正義”が、理不尽きわまりない殺人行為となって老人や幼い子どもにふりそそぐ。
だからこそ生命の大切さ、生物をいたわる心を育てる教育が必要なのだ。」(要約)