戦時下の精神状態

 

 一昨日、数十人か数百人か、ロシアの若者が乱闘している映像を観た。ウクライナでも若者の集団のケンカが起きていたという。どこまでが事実なのか分からないが、事実だとすればこの現象は、いったい何なのか。若者の精神の状態が現れてきているような気がする。

 感情の鬱屈、感性の抑圧、希望がない、展望がない。精神の解放がない。未来はどうなる、若者たちの心を不安感が襲う。

 平和な時代ならば、芸術、学問、スポーツ、旅、冒険、労働に打ちこめた。今はそれが封殺されている。ロシアは以前からオリンピックなどを国威発揚の場にしようとしてきた。

 戦時下の青年たちは不安だ。いずれは兵士になって戦場に向かうことになるのか。精神の解放のない戦時下の暮らしは、異常な心の状態を生み出すこともあろう。

 

 アジア太平洋戦争の時、日本の若者も同じような、あるいはそれ以上の圧制のなかに置かれていた。特高警察は民間人の中に入り込んで、戦争に反対するものは片っ端から捕らえて牢獄にほり込んだ。政府は、住民同士が互いを取り締まり、団結して戦争に協力する、「隣組」という仕組みをつくった。学校の中に配属将校を送り込んで、教育を支配し、青少年を兵士にすることをもくろんだ。学校報国隊が組織され、勤労動員によって工場などで労働させられ、そして学徒動員、ついに学生たちは銃を担いで戦場に散っていった。