ハクビシン・アリ・ミミズ


道路際に、一匹の獣が横たわっていた。
死んでいる。
でも、きれいな身体だ。
鼻筋が白く、身体は灰褐色、体長は5、60センチはある。
タヌキではない。アライグマでもない。
ひょっとするとハクビシン
不思議なことに、同行のランは気づいているのか気づいていないのか、関心を示す様子がない。
誰かに聞いてみようと思いあちこち眺めてみたが、早朝だから人の姿もなく、そのまま家に帰ってきた。
インターネットで検索すると写真入りでデータが出てきた。
やはりハクビシンだった。
ハクビシンは白鼻芯、鼻筋が白いことから名前がつけられている。
ジャコウネコ科で東南アジアに多く生息しているようだ。
謎のある動物らしく、移入動物のようだが、日本列島に現在生息している個体群は、顔の斑紋などが他の地域のものと異なることから、日本に自然分布する固有の独立亜種である可能性を唱える説もあるとか。
環境省は、「移入時期がはっきりしない」として、明治以降に移入した動植物を対象とする外来生物法に基づく特定外来種に指定していない。
この獣、実物を見たのは初めてだった。
夜に活動していて、車にはねられたのだろうか。
落葉松の大きなのがすっくと立っている家の前だった。

     ☆   ☆   ☆

一天にわかにかき曇り、ばらばらと降ってきた。
それまで庭の土の上を歩いていたアリたちが逃げ出した。
一斉に同じ方向に向かっている。
グランドに散らばっている子どもたちに夕立がやって来て、
教室に向かって走りだす子どもたち、それとそっくりだ。
アリの9割はみんな同じ方向めざしていて、
逆方向に向かうのは1割ほど。
9割ほどのアリの巣と、1割ほどのアリの巣は別々のようだ。
大粒の雨はたちまち土をはね、大地を洗い流し、土中に浸透していく。
夕立の大型みたいなどしゃ降り。
ラジオの天気予報で、今日の午後、どしゃ降り以上の雨が来ると言っていたとおりだ。
どしゃ降りよりもひどいという具体的予報に驚いた。
なるほどその通り、アリたちにとっては、これは洪水同然だ。
勢いの増す雨のなかで、いつのまにかアリたちの姿が消えていた。
大雨を察知して、彼らは巣に急ぎ、巣の中でじっと待機しているのだろう。
アリの観天望気、アリのテレパシー。
すごい能力を持っている。

    ☆    ☆    ☆

畑の草をむしっていると、ミミズが飛んで出てくる。
鍬で土を削っていても、飛んで出てくる。
今春、土の表面にキノコの廃物菌床と木のチップを敷いたのが、ミミズの増える温床となった。
つやつやした元気なミミズ、
その動きがすばやい。
手足もないのに一瞬にして地表に出現する。
ミミズが飛んで出てくるのは、ぼくの手による振動をモグラがやってきたと勘違いするらしい。
土のなかでモグラに食べられるのを避けるために、彼らは地表に大慌てで出てくる。
以前、モグラに追われた大ミミズが、身体の半分以上地表に逃れ出たところで、モグラに追いつかれ土の中に引き込まれたことがあった。
そのときのミミズのスピードには驚嘆したものだ。
ぼくは出てきたミミズをすぐに土の中にもどしてやる。
太陽に焼かれるなよ。