目覚め

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 椅子に座って、ぼんやりと庭の草木を眺めている。こんなふうに何をするでもなく、山を眺め、雲を見て、頭に浮かぶ想念の、ゆらゆらと過ぎていくのを感じることって、これまでそんなになかったように思う。日が昇る前、散歩の途中で、村の公園の木のベンチに腰を下ろして、ぼんやり過ごす。

 ふとヘッセの文章を読んでみたいと思う。

 ヘルマン・ヘッセの詩に、「絶望からの目覚め」というのがある。

 

  悩みの興奮から私は

  よろめきながら起き上がり、

  涙をすかして ふるえながら、世間を見る。

  もう夏は森に沿って 匂いながら去るーー

  おお、緑色のつややかな夕べよ 星空よ、

  なんとお前たちは私の胸をあこがれにあふれさせることよ。

 

  友よ、君たちはまだ生きているか。

  ワインよ、お前はまだ輝いているか。

  お前はまだ 私のものか、魅せられた世界よ、

  久しい間 私はそこに空虚だけを見、

  今は涙をへだてて 遠くに動いていくのを見るだけだ。

  輪舞はもう一度始まるだろうか、

  甘い夏の魅力は

  死んだものをもう一度引き戻すだろうか。

   魂は奇跡を疑っている。

  まだ夏と森はわたしのものにもどらない。

  しかし星はいっそう神聖に 明るく輝いている。

  私は無言で耳を澄ます、

  久しい間 私は語らなかった

  現世の鐘よ、

  私に運命の歌を 青銅の音に響かせよ。

   そのとき私の胸も ためらいながらこだまするのだ。