間引き菜


今は亡き灰谷健次郎が、
人間一人が生きていくための野菜を作るとしたら、
そんなに広い土地は要らない、
わずかな土地でも、自分の食べる分を作ることはできる、
猫の額のような土地でも、自分の家族の分くらいは自分で作ってみましょうよと言って、
実際自分でも畑を作っていた。
淡路島で生活しながら土に親しみ、
その後沖縄に移って執筆と教育への発信をつづけるかたわら畑をしていた。


ぼくの今作っている畑は小さいが、
それでも結構いろんなものが作れる。
買ってきた野菜の種は、全部使いきることはなく、
一袋買えばいつもいくらか余ってしまう。
キュウリとか小松菜のような、
時期を少しずつずらして種を播けば連続して長く収獲できる野菜は、ほぼ一袋の種を使い切ることができるから、
今年はその方法で種を播き、キュウリはいつもふんだんに食べることが出来た。


9月に播いた野菜が芽を出し、今、大根と野沢菜の間引き菜を食べている。
すじ播きした2列の野菜が発芽し、双葉から本葉を出してくると、ぎっしりと混みあってくる。
一回目の間引きをしてすっきりさせてから数日経てばまた混みあっている。
豚しゃぶに、湯豆腐に、ほうれん草を使う代わりに、野沢菜と大根の間引き菜を入れたら、
タレにつけると柔らかくて、甘くて、
ほんにまあ、おいしいものでした。
当分間引き菜が食卓にのぼる。
飛騨の赤カブの間引き菜もこれから食べられる。
つづいて小松菜、青梗菜(ちんげんさい)、山東白菜、ほうれん草とつづく。
そのうちサツマイモの収獲だ。
これが楽しみだなあ。
10月に入ったから、今月中に育苗してきた赤と黄のタマネギを定植しなければならない。
親株から二郎苗と三郎苗を切り取って育ててきたイチゴの苗も定植する。
今年はスーパーゴーヤがよくとれて、ゴーヤチャンプルもうまかった。
ミニトマトも夏の間は毎日のように食べた。今もまだ食べている。
細ネギ、太ネギは年中欠かしたことがない。
きのうニンニクを植えた。
サトイモも葉っぱが大きく茂っている。
サトイモは、台所の隅に食べられないで忘れられていた小さなイモが種イモになった。
堆肥や落葉をたっぷり入れた土に育つと、サトイモのおいしさはたとえようもない。


自給自足に近づける野菜作り、少しでもいいからやってみると面白い。
その味に感嘆する暮らしの豊かさ。