人類

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 昔、ブラジルの奥地に、山をへだてて二つの部族が住んでいた。

 二つの部族は、一年に一度、戦争をするのが長い間の慣習になっていた。決められた日、戦士たちは山の両端から登り、山上ではなばなしく戦いを繰り広げた。武器は槍やこん棒。

 この戦争で毎年数人が死に、十数人が負傷した。死傷者が出ると戦いを切り上げ、山を下りた。

 それから一年間、翌年の戦いまで、二つの部族は互いに激しく憎みあって暮らす。部族の中に病人が出たり、狩りの獲物がとれなかったりすると、これはきっと山の向こうの奴らが悪いまじないをしているからにちがいない。あの、卑劣な奴らめ、来年は思い知らせてやる、そうして憎しみと怒りをためこんで、次の年の戦いにのぞんだ

 そしてその日がやってくると、戦士たちはまた山の両端から登って行って山上で戦い、終わるとまた死傷者を担いで山を下り、憎しみをつのらせて次の年を待つ。

 何年かしてその部族のところにポルトガル人が来た。

 彼らは両部族に鉄砲を売った。

 二つの部族は鉄砲を手に入れ、戦いに使った。鉄砲の殺傷力は強く、双方に未曽有の死傷者が出た。

 そしてまた次の年、憎しみを倍増させて戦いをやった。被害はますます甚大になった。

 そうするうちに両部族それぞれのなかに対立がおこり、団結がくずれ、喧嘩や争いが激しくなって、ついに両部族とも崩壊してしまった。

 

 この話は、社会心理学者の我妻洋と文化人類学者の米山俊直という学者の共著『偏見の構造 日本人の人種観』(1967年 NHKブックス)に出ている。

 

 一九六〇年代に、京都大学ニューギニア探検隊に加わった本多勝一ニューギニア高地人の部族間戦争のことを書いている。現地でのルポである。

 草原で両部族の戦士が横一列になって向かい合い、にらみあって悪口を言い合い、ののしりあい、アシの矢を射る。そして死者数が同じになると、戦争は終わる。この戦争は、侵略とか支配とかは関係なく、原因は女性と豚に関するものだった。

 

 では現代社会、日本と世界の状況はどうだろう。アメリカは音速の五倍のスピードで敵陣にとどくミサイルを開発したというニュースが今朝報じられていた。北朝鮮でもミサイルの発射が行われたというニュースだ。