三九郎

 「三九郎」という呼称はこの安曇野あたりで言われている。全国的には「どんど」「左義長」である。小正月に行なわれる子どもの火祭りだ。

 「三九郎」の名前の由来はいくつかある。地区の公民館で、お昼から子どもたちが集まって、「まゆだま」をつくった。柳の枝に、色粉をまぜた何色かのダンゴを、小さく丸めてくっつける。「まゆだま」は、養蚕の盛んだったところで、養蚕の安全を祈願した。


 集まった子どもたちは45人、「まゆだま」の形をいろいろ変えて、オリジナルの「まゆだま」を作るのが楽しい。子どもの創作は遊びでもある。遊びがあるから、楽しい。作り終わると、チャンバラごっこが始まった。

 自分の作った「まゆだま」を持って、全員集合。これを下の田んぼの持っていって、「三九郎」の火で焼いて食べる。こんなに子どもたちが集まるのも、夏の「マスつかみ」と「三九郎」ぐらいだ。子どもたちが集まれば、遊びがはじける。叫ぶ、走る、体と体が接触する、今の子どもたちに不足している原点の遊びだ。

 点火。今年のやぐらは、小さかった。山から木を切り出せなかったからだと聞いた。松の木、ワラ、しめなわ・松飾、だるま、書初めなどが、中に入れられている。我が家のしめなわもその中にある。燃え上がった。

 昔の子どもたちは「三九郎」のやぐらを基地にし、他地区の「三九郎」と火つけの攻防戦を展開した。そして少し「卑猥な」歌をはやしたてたというが、今は何もない。子どもの世界には、しもねたをおもしろがって、遊びにするものだが、だんだんそういうのも禁句になって、野性味が失われてきた。

 燃え尽きたら、燃え残りのおき火で「まゆだま」を焼く。お母さんたちが、温かいカレーウドンをみんなにふるまってくれた。