ネズミ大活躍


 朝10センチほど雪が積もっていた。ガレージ前と家の北側の道の雪かきをした。日が上がってきたら、お向かいのみよ子さんが、マミを連れて散歩に出てきた。足下がおぼつかない。
 「すべるよ。すべらないようにね」
 声をかける。大丈夫かね、その靴じゃ雪道、あぶなっかしいな。
 「マミが、ひっぱるんだよ。ひっぱるんじゃないよ」
 みよ子さん、少し引っぱられぎみで、それでも、みよ子さんとマミの姿は小さくなっていった。
 みよ子さんの家の前の雪もかき、やっぱり気になったから、マミの行ったほうを目で探したが、姿が見えない。すべって転んでいないだろうか。転ぶとたいへんだ。迎えに行ってみよう、と穂高地区のほうへ歩き出すと、マミを連れてこちらに帰ってくる姿が見えた。無事だった。
 「迎えに来ましたよ」
 マミのリードをみよ子さんから受け取り、ぼくがマミを引いて帰る。マミは喜んで飛びついてきた。
 「どこまで行ってきましたか? こんなに歩けるようになってよかったね」
 「足が痛いけれどね、がまんしているだ」
 「痛くても歩かなくちゃ、歩かなくなると衰えるばかりだからねえ」
 みよ子さん、転ばなかった。よかった。

 軒下をアクリル板の波板で囲って物置にしたところに、またネズミが巣を作っていた。冬になるとここが温かいから集まってくる。土間なので、地面のなかにトンネルを掘って侵入してくる。
 ビンや空き缶、ペットボトルなど処分に出すもの、割れたガラスに壊れた食器類、そんなガラクタを乱雑に置いてある一角が、ネズミにとってはいい隠れ家になるようで、昨日それらを取り除いて地面を見てみたら、すごいことになっている。ネズミたちの別荘が着々と建設中だった。地面にぽっかり直径10センチほどの穴が開けられている。地中を掘って、アクリル板の壁の下を潜り抜け、部屋の中に通じる秘密の地下道だ。土が細かい砂利交じりだから掘りやすい。土砂がうず高く、バケツ二杯分ほど積み上げられている。ネズ公たち、あの小さな手で、よくまあ、こんなに掘れるものだ。この物置にはガスの給湯器もあり、気温が周りより高い。ネズミはよく知っている。
 この機会に、巣は一掃しよう。ガラクタを外に出し、地面をならしてトンネルをつぶし、穴を全部ふさいだ。そこに巌さんからもらった木のサッシの廃材を使って三段の棚をつくることにした。三段の棚には野菜コンテナを引き出し式に入れる。コンテナは、空き缶、ペットボトル、破損ガラス・陶器、ビン、鉄くず、などを分類して入れる。
 コンクリートブロック8個を買ってきて基礎にし、廃材を組み立ててコンテナ棚がほぼ完成。これで地面を覆っていたガラクタはなくなる。
 ネズミは、どうするだろう。
 天気予報では、明日の気温の最低がマイナス10度、最高がマイナス1度。冷えるなあ。