爺ヶ岳スキー場へ孫たち家族が行ってきた

 孫が二家族二人ずつで計四人いる。長男の息子で、いちばん年上の孫が小学一年生、あと三人は幼児、この正月に帰ってきたらそろってスキー場へそり遊びに行く予定をしていた。ところが暮れに小学一年生のボウズがおたふくかぜにかかって、来れなくなった。結局帰ってきた次男坊の家族四人だけでスキー場へ行くことになった。
 スキー場の情報は、半月ほど前、地元の人に聞いてみた。小学生の子どものいる川上さんは、爺ヶ岳スキー場が近いし、子どもが遊ぶにはいちばんいい、と推奨する。
 秀武さんにも聞いてみた。やはり爺ヶ岳がいい。この辺りの人は子どもを連れて行くときはそこへ行く。
 北アルプスの連峰では爺ヶ岳鹿島槍ヶ岳が並んでいる。スキー場の位置も、鹿島槍スキー場の西側の谷に爺ヶ岳スキー場がある。秀武さんは、北の山を指して、
 「いま、白く光っている点が見えるでしょう。あの下辺りから入るんですよ」
 「そこまでの道は、ちょっとややこしいですね」
 「いや、そんなことないですよ」
 そこから秀武さんはコースと説明し出した。広域農道を行く。ちひろ美術館のほうへ行って、大町のほうへ走って、橋を渡って、コンビニのローソンがあるから、そこを左折して、大町温泉郷の中に入って‥‥、温泉郷へ入らない道もある、それは‥‥、秀武さんは自分の頭の中で車を運転している。走っていくと、どこそこの交差点を通り過ぎ、どこそこの店が現れ、頭の中に現れる風景を説明する。ところが聞いているこちらの頭にはいっこうに風景が浮かばない。でも秀武さんは一生懸命説明してくれる。詳しく説明してくれる。けれど分からない。わからないが、実際に行ってみれば、なんとかたどり着けそうに思えてくる。どこで曲がって、というのを覚えようと思ったが、それはあきらめた。覚えても覚えられないことは分かりきっている。それでいい。それでもなんとか行けそうだ。
 「その道で行ってみます」
と言って、秀武さんと別れた。
 息子夫婦と子ども4人が神戸から昨夕やってきた。そして今朝、スキー場へ行くことになった。秀武さんの教えてくれた道はぼくの頭に残っていなかったから、家の地図で道をたどって、息子に伝えた。息子の子どもは女の子二人。息子は、ケータイのナビゲーターがあるから大丈夫と言って、そりを積んでスキー場へ出発していった。ぼくは行かなかった。
 安曇野の天気は快晴。だが、爺ヶ岳は雲で隠れている。
 夕方、四人は帰ってきた。いいスキー場だった。小規模で、スロープはなだらかで、すいていて、そりで滑ったし、雪だるまをつくった、と言った。
 「大きな雪だるまを作っていたら、スキー場の人が、お客さん、雪が貴重なので、ほどほどにしてくださいね、と言ってきてね」
 ゲレンデの雪がまだ充分ではないのだろう。スノウガンで人工雪をつくっているのだろう。爺ヶ岳ゲレンデは白馬より南にあり、積雪はまだ少ない。小学生ががんがんスキーで滑っていたと。
 施設も古いままの、素朴なゲレンデでよかった。雪はパウダースノウだったと、息子の嫁が言った。