正月の神様


                     暮れのしめなわづくり(公民館で)




昔、正月の神様がいました。
人びとは、正月の神様をお迎えして、正月を迎えました。
正月は新しい春でした。
人びとは新しい春を待ち、
みそぎをし、身を清めました。


年の暮れ、人びとは、暮らしの場を清め、神様を迎える準備をしました。
しめなわ、松飾りを玄関にとりつけ、おもちをつき、鏡もちをかざり、おせちをつくって、正月の準備をしました。
晦日、人びとは、神様を迎え、新しい出発ができるように、心と身体の一年分の垢を落としました。
すべてが清浄無垢になりました。


正月の神様は、田の神様であったし、山の神様であったし、海の神様でありました。
正月の神様は、地球の神様であり、太陽の神様であり、宇宙の神様でありました。


元旦、若水をくんで、身を清めました。
昇ってくる初日を拝みました。
家族みんなでお雑煮を祝いました。


お正月は、心と身体を新しくしました。
生きる力をよみがえらせました。
みんなが元気で、仲良く、幸せになるように、
福を神様にお願いしました。
神様を迎え、新しい出発ができるように。


昔の人の生活は厳しいものでした。
つらく、厳しかったから、神様を大切にしました。
神様を大切にして、心身を清めました。
神様を迎え、新しい出発ができるように。


文明は進歩し、暮らしは大きく変わりました。
便利になり、物が豊かになりました。
生きる楽しさは増し、また厳しさも増えました。


文明は新たに、今までにない不安をもたらしました。
もう人びとは神様を迎えることをしなくなりました。
正月は、娯楽と休養の正月になりました。


2013年、正月を迎えました。
神社に孫と一緒にお参りしました。初日の出を拝みました。
我が家の正月は、息子たち、孫たち一緒のにぎやかなものでした。
暮れに帰ってきた息子は、
一本の日本酒をお土産に持ってきました。
スウェーデンストックホルム
山仲教授のノーベル賞受賞記念の晩餐会で出されたという日本酒と同じ、
「福寿」という名の蔵出しの日本酒でした。
それで乾杯をしました。


正月は新しい春です。
新しい春を待ち、
幸せを願い、
みそぎをし、身を清めましょう。