教員すべてにカウンセリングの基本を

いじめ問題から、学校にカウンセラーを置くという政策が考えられているらしい。しかし、現実的にそういう能力を持つ資格者がいないことから、すべての学校に配置することには無理がある。何よりも重要なことは、教師一人ひとりがカウンセリングの本質と理論を学び、技術を身につけることである。
現実の学校現場では、実にさまざまな教師像が見られる。人間とはそういうものだから、学校もそれはそれでよい。おしゃべりな教師もいれば、まったく無口な人もいる、愛想のよい快活な人もいれば、ぶっきらぼうな人もいる。いろいろあってそれでよい。けれども教育というこの場にこの人物がなぜ存在しているのかと思えるような、子どもに向き合おうとしない人もいる。
子どもが人間として育っていくことをサポートする教育という仕事には、基本的な立ち位置がある。踏み行なうべき道がある。カウンセリングの基本を身につけることは、教師すべてに欠かせない考え方であり技術である。
NPO法人日本精神療法学会 理事長の松本文男氏は、カウンセラーの養成に長年尽力されてきた。徹底して「心を傾聴する」というカウンセリングを重視してこられた。松本氏のこんな述懐がある。
不登校児のいる学校が、指導と称して子どもをいっそう幻滅の淵に追い込んだり、教育委員会の指導者や児童相談所の指導者、社会福祉関係の指導者などが、強い子を育てる善意ではあるかもしれないが、実際にはさらに子どもたちのエネルギーを奪う作業を熱心に行なったり、企業も、出勤不能の従業員を再び立ち上がれぬような窮地に追い込んだり‥‥、教育の名、指導の名、治療の名で、連日行なわれていることは、まさに異常事態と言ってもよい現実です。」(「心のカルテ」ほおずき書籍)

松本氏は、出勤できない人へのカウンセリングをやってきて、その家族がやってきた「七悪」をあげている。これは、学校不適応の子どもにも通じる。

1、本人の状態いかんにかかわらず無理に出勤(登校)させようとする。
2、本人の将来について言及しすぎる。
3、本人の性格を軽蔑したり侮辱したりする。
4、本人の能力を批判し劣等と位置づける。
5、周囲の人と比較する。
6、近隣や親戚や縁ある人に恥ずかしいと、恥の概念を述べ立てる。
7、家族が困った、悲しいと、苦しんでみせる。

親も教師も、
「心の内側を同じ深さで感じ取って、子どもに伝え返すことから、第一歩が始まる。そこからしか子どものエネルギーの回復は起きない」。
子どもを育てるために、教師を育てる、その第一歩がここにありそうだ。すべての教師がカウンセリングの基本を身につけることが必要だと思う。
11月17日(土)に地元の堀金総合体育館サブアリーナで、「身も心も輝く 〜人間生長のため 脳科学からの援助」というテーマで松本氏の講演があることを職場の非常勤講師の同僚から聞いた。その先生はカウンセラーの資格を得られた。講演会は教職員組合の主催だそうだ。拝聴させてもらおうと思う。