秋の命

秋になると山から下りてきて田畑の上を群舞するアキアカネ、すなわちアカトンボが少なくなっている。日本の田野に生き続けてきたメダカも絶滅危惧種になり、アカトンボもそうなるかもしれないと、御在所岳で生態系の研究をし写真を撮り続けてきた人の、憂える姿がTVに流れていた。我が家の小さな庭に、アカトンボが何匹かすいすい飛び交っている。しかし群舞というほどではない。
アシナガバチも今年は少なかった。巣を作っていたのが途中でいなくなって、空き巣になっているのもあった。去年は何匹もいたカマキリは一度も見なかった。コオロギはいることはいる。夜に鳴き声は聞こえる。けれどあの数々の秋の虫の協奏曲はない。近くの神社では鳴いていたミンミンゼミだが、田野の中の我が家ではまったく聞こえない。
 
 秋野菜の種まきは、この猛暑のなかでは失敗もあった。シュンギクは、一回目の種まきからは一本も発芽しなかった。直射日光を覆いでさえぎり、水やりもしたけれど、気温が適温限界の22度を超えて30度近かったのが影響したのだろう。種袋には、発芽の適温は15度から22度と書いてあった。ニンジンも一度失敗し、二度目で成功した。コマツナと大根は見事に生えそろい、今、間引き菜を食べている。
タマネギとほうれん草は発芽50パーセントぐらいかな。ポットに播いたキャベツ、白菜、リーフレタスは、どのポットも発芽した。ところが屋内に置き過ぎて、日の光に当てるのが遅かったせいか、細い白い茎がひょろーっと伸びて、その上の双葉が心細そうに風に揺らいでいる。急いで日に当てているが、さてたくましい苗になるか。
野沢菜をどこに播こうか、そうだ、枝豆を引いたところ一畝をそれに使おう。根瘤菌がチッソを固定してくれているだろうから、肥料は無しでいけるかもしれない。枝豆は播く時期が遅かったから、ちょうど今実が入って食べごろだ。少し枝豆で食べて、大部分は黒豆の味噌にする予定だ。日曜日、弟家族がやってきたから、枝豆とカボチャをお土産に持って帰ってもらった。弟夫婦の長男次男は社会人、三番目の娘は大学生、久しぶりに家族五人信州の保養施設にやってきて、温泉につかってきたということだった。
秋分の日が過ぎた。それなのに庭の彼岸花が咲かない。土から頭をもたげてもこない。よそでは咲いているというのに、なぜだろう。

  ポケットの栗にふくれる朝の道

 毎年落ちているのを拾ってくる栗、今年もポケットをふくらませて帰ってくるここ数日の朝だった。今夏は日照り続きだったせいか、栗の味はおいしい。カボチャもトマトもよい。トマトはもう終わりに近づいた。それでも実をつけようとする。インゲンもそうだ。急激に気温が下がって幹も葉も枯れるまで彼らは生きて実をつけようとする。