今年初めてのトンボと、桑の実摘み


雨一降りすると草は一挙にぼうぼうと競うように生える。
草刈り機であぜを刈った。
そこは私の土地ではないが、我が家に連接しているタマネギの種取りをする専業農家、Kさんの畑の土手、
土手は傾斜が強いし、Kさんは私よりお年だから、この30メートルほどは、私がずっと刈ってきた。
刈り取った草は、また作物の肥料に還元する。
今年は、カボチャ2本をその土手に這わせよう。
ハナミズキの木の下に植えたカボチャは、もう50センチほど蔓を伸ばしている。
蔓の伸びるあたり一面に、刈った草を厚く敷いた。


去年、グリーンカーテンにするために植えて、たっぷり実をつけてくれたゴーヤに、朝顔、夕顔が、こぼれ種から芽を出した。
こんなにこぼれ種から芽吹くとは思ってもいなかったから、わざわざ種を買ってきて播いておいたのだが、気温の低かった時はなかなか発芽せず、
今になって、ひょこひょこ土をもたげて双葉をのぞかせ、グリーンカーテンの苗場は苗だらけだ。
地温と気温がその植物にぴったり適したときに、命が動き出す自然界の妙。
今年のグリーンカーテンに新たに加わったのがヘチマ。
ゴーヤ、なれなれ、
朝顔、咲け咲け、
夕顔、香れよ、
ヘチマ、どかんと実をたらせ。


今年初めてトンボを見た。
シオカラトンボと同じ体型の茶色っぽい三匹がキイチゴの葉に止まっている。
いつも疑問に思いながら調べもしなかったその色。
シオカラは青っぽい感じだが、もう一種黄色っぽいのがいるのは種が違うのかと思いつつ、
その色違いのわけを知らなかった。
調べてみたら、黄色っぽいのはシオカラトンボのメス、またはオスでも未成熟なトンボだということだ。
同種だった。
ヤンマはもう長年絶えて見なくなった。
鬼ヤンマ、トラヤンマ、ギンヤンマ、
子どもたちのあこがれ、興奮して目を輝かしたトンボの王様。
昔子どもたちは、一粒の飴玉を包んだ千代紙に豆粒ほどの小石を入れて糸でくくり、その二個を20センチほどの糸でつないで空に投げ上げた。
ブリと言っていた。
ブリは、夕暮れの空をくるくる回ってまた落ちてくる。
それを虫と勘違いしたヤンマが追いかけてくると、糸がはねにからんで一緒に落ちてくる、
という仕掛けだった。
これはなかなか成功しなかった。
もう一つ方法があった。
一匹のヤンマを糸でつないで棒の先につなぎ、
「らっほーえー、らっほーえー」
と歌うように悠々と舞うヤンマに叫びながら、おとりのヤンマを飛ばせる。
すると、空のヤンマが、おとりのヤンマに飛びついて、絡み合って落ちてくる。
これはときどき成功した。
子どもたちが尊敬した偉大なヤンマ。
孵化する自然が破壊されて、彼らは姿を消してしまった。


桑の実が食べごろになった。
朝、いつもの散歩コースにある桑の樹で実をつんでいると、田んぼの水見からもどってきたおじさんが、ニコニコ顔で、
「どんどん摘んだらいいだよ。脚立持ってきて上のほう、摘んだらいいだよ。」
と声をかけていった。
ランは、朝のおやつ。
落ちている桑の実を草の間からぱくぱく食べている。
毎年、洋子の作る桑の実ジャムが、朝の食卓の天然酵母パンのお供だ。