ほうき草、もらってください

 公園で。「シロアリだぞ」と子どもたち。



 今年のグリーンカーテンはどうするかなあ。去年は、南側の窓下には、朝顔とゴーヤ、西側の窓には夕顔にヘチマ、東の窓辺には夕顔とゴーヤを植えた。今年は、趣向を変えて、インゲン豆を西側に植えようかと考えた。豆類は連作障害がきつい。去年、「穂高菜豆(インゲン)」を庭の畑に植えたところ、生長はしたが葉っぱに異常が現れ豆の収穫はさっぱりで、連作障害のようだった。狭い庭の畑だから、作物によっては5年ぐらい同じ種類のものは植えないほうがいいとなると、なかなか難しい。そこでこの窓下のグリーンカーテンの一箇所をインゲンの畝にすることにした。半日陰になるけれど、思い切って豆をまいた。うまく育つかどうか実験だ。
 その畝の横に、去年の「ほうき草」のこぼれ種から、無数の芽が出ている。何百本あるか、引っこ抜いて枯らしてしまうのももったいない。そこで名案が思いついた。近くの造成地に新しい住宅が数軒建てられ人が住んでいる。どの家も子どもが小さく、若い夫婦だ。庭にはまだ何も植えられていない。そこの人がもらってくれるとありがたい。そう思いついて、空が急に曇って、天気が怪しくなりだしたころだったが、「ホウキ草」の苗を百本ほど箱に入れ、自転車に積んで持っていった。
 「ホウキ草、もらってくれますか。秋になると紅葉がたいへん美しいですよ。ホウキも作れます。私は去年作りました。庭の隅の、境界線あたりに並べて植えると、秋になると美しいですよ。」
 そんな口上で、出てきた奥さんと、いろいろ話ができた。一軒目の奥さんは喜んでもらってくれ、早速植えますと、移植ゴテを持ってきた。二軒目の奥さんは、
「私の実家はこの近くで、そこにもホウキ草があるので」
と、もらってもらえず。それでもお話はできた。
「以前ご主人とお話したとき、私の言葉に関西なまりがあるとおっしゃったことがありましたから、てっきり大阪出身の人かなと思っていました」
「主人は、大阪に仕事で行っていたので、大阪が好きみたいですよ」
「そうですか、私は大阪生まれで後に奈良に住み、ここに来てからときどき、奈良の仏さんたちが恋しくなることがあります」
「そんなに仏像がお好きなんですか」
「いいですねえ、大和の仏像は」
 三軒目の奥さんは、あまり草花を植えたことがないと言いながら、
「じゃあ、植えてみますか。」
となった。話は、小学生の子どものこととなり、今サッカー部に入っていてそれが忙しくて、この地区の子ども会の活動には参加できないでいるとおっしゃる。
「6月9日に、子ども会でサツマイモの苗植えをします。参加できませんか」
「その日も、サッカーの練習があるんですよ」
「そうですか。残念ですねえ。できたら参加してもらえるといいんですがねえ。場所は、あそこに二つの道祖神があって、サクラが二本あるでしょう。あの下の畑です」
 ぼくは今年、地区の「子ども会育成会」の会長になり、その計画を今進めている。
 雲行きがいよいよ怪しくなってきた。ダンボール箱を自転車に積んで、一軒目の家にもどって来ると、奥さんが植えているところだった。
「手伝いましょう」と声をかけて、庭の前にほんの少しある空き地に並んで植えていった。
「水をたっぷりかけてやってください。根づいたら後は大丈夫です」
 奥さんは目の前の水路からジョウロで水をくんだ。
 帰り道、ぽつりぽつり雨が降ってきた。残りの苗は公園に植えよう。