[農の暮らし] アリジゴク式のネズミ捕り



夜明け前、Oさんが涼しいうちの一仕事をしている。
「ジャガイモ、たくさん入っていますか。」
訊くと、
「まあまあだね、ネズミがかじっていますね。」
「ネズミ? ジャガイモをネズミが?」
「ええ、ネズミ。」
「去年私とこではサツマイモがかじられましたよ。」
「サツマイモは甘いからねえ。」
「じゃあ、うちのジャガイモもやられるかな。」
そこで今日、ぼくも早朝のジャガイモ掘りをした。
被害はまだない。


信州のネズミはかなり手ごわい。
最近も納屋の土間にネズミが穴を掘って地下道をめぐらしているようだ。
ネズミが掘り出した土が山になっているのを発見したのは一月ほど前のこと。
ネズ公は、納屋に入ってくるのも地下道を掘ってくる。
3年前は、コンテナに入れておいたリンゴがかたっぱしからかじられた。
昨年は、畑のサツマイモをかじられた。
今年はコーン製の車用の座布団に穴を開けられた。
裏の畑で種用のタマネギを栽培しているKさんは、
「タマネギ畑のモグラの穴にネズミが住んでいますよ。モミ米を殺鼠剤に混ぜると効果があります。」
とのこと。
いよいよネズミ退治だ。


児童館で相棒のSさんにネズミ退治の話をしたら、
「とっておきの方法があるだ。」
と、絵を描いて説明してくれたのは、意外な方法だった。
「大型バケツにお湯を半分ぐらい入れるだ。
その上に米糠(こめぬか)を乗せるだ。
お湯の上に浮かせるわけね。
それでバケツに板をこういう具合に、ネズミが上ってこれるように立てかけます。
夜の11時ごろ、ネズミが行動し始めるころに、これを仕掛ける。
するとお湯の温度で、米糠の匂いがホンワカ漂うわけ。
そしたらネズミが匂いにひかれてやってきて、板を上って見たら糠がある。
そこで、糠の上にぽんと降りたら、ドボン。」
「ははあ、米糠でおびき寄せて、湯の中に落とすワナだな。」
「私はこれで多い時は一度に7匹とっただ。
一匹目が落ちたら、キーキー鳴く。その悲鳴を聞いて他のネズミがやってくるんだよ。
次々やってきて、みんな飛び降りてアップアップだね。」
「バケツの表面はつるつるだから、逃げられないと言うことだねえ。」
「そう、そう、朝ネズミが入っていたら、ふたをしてしまえばいい。殺すのはいやだけれどね。」
なるほど、おもしろい。
「これ、誰が考えたのです?」
「わたし」
「ははあ、サルタ方式のオリジナル。」
「糠は時間がたてば、お湯を吸って湯の中に溶け込んで沈んでいくから、毎回新しく準備しなければならないよ。」
「じゃあ、麦わらなどを細かく切って湯に浮かせて、その上に糠を層になるように敷くといいかもしれないね。」
「そうだね。」


というわけで、このアリジゴク式ネズミ捕り、やってみるか。まずはブリキのバケツを用意して。
で、いつ実行するかな。