今年も餌台に米糠を置いてやった



 去年の冬つくって、ヤマボウシの枝に取り付けた小鳥の餌(えさ)台は、緑の葉を茂らせる夏場は取りはずしておいたが、今年の冬もスズメたちの餌が少なくなる雪野になったから、先日取り付けた。
 直立して上に伸びるヤマボウシの4本の枝にまたがるように、木切れで作った餌台を針金でくくりつけ、今年も米糠をお椀一杯分ほど置いてやる。すると、去年を覚えていたスズメなのか、目ざとく見つけたスズメなのか、どこからか集まってきた。
 昨日は工房の屋根の雪が、どかんどかんと落下した。屋根はガルバニウム鋼板の波板だから、抵抗が少なく落下しやすい。ウッドデッキには1メートルほど落下した雪が小山になっていた。それを雪かきスコップですくって、外の畦に投げる。夕方になっても周辺の雪かきが終わらず、スズメたちがねぐらに行くまでに、新たな米糠を置いてやりたいと気がせいた。日は沈み、辺りが暗くなってやっと一段落したので、米糠を紙袋から取ってきて、餌台に置いてやった。前に置いた米糠はほとんど食べられていて、食べ残しが少しあるだけだった。新たに置いた米糠は餌台に山盛りになった。冷えてきたから家にはいって窓から庭の餌台を見た。人の居なくなった庭に、スズメがまた集まってきていた。闇の訪れるのはすぐだ。スズメのねぐらはどこにあるのか、暮れると、雪明かりのどこかへ彼らは消えていった。
 今朝、スズメは待ちかねているだろう。餌をすぐにやろうと、ランの散歩が終わると、すぐに餌台に山盛りの米糠を載せた。
 朝ごはんに蒸しジャガイモを食べながら観察すると、スズメは30羽近く集まっている。餌台に乗れるのは8羽ほどで、残りのスズメは、下に落ちた糠をつついている。ヤマボウシの木の下には、風に吹かれて飛び散った米糠や、餌台をついばむとき跳ねのけられた米糠が落ちていて、雪が黄色くなっている。
 突然一斉にスズメたちが飛び去って、ハナミズキの枝や工房の屋根に移った。その瞬間、黒い固まりが視界をよぎって飛び込んできた。ヤマボウシに止まったのはスズメの2倍ほどはあるヒヨドリだった。スズメは体の大きなヒヨドリを避けていた。貪欲なヒヨドリは、スズメたちの行動を見ていて、餌があると気づいたらしい。ヒヨドリは3羽いて、そのうちの1羽が餌台を独占して食べ始めた。スズメは周りで観ている。もう一羽のヒヨドリも餌台に来て、2羽でばくばくやりだした。スズメはやっぱりかなわない。ところが、中に大胆な性格の子がいた。ヒヨがいても餌台のはしっこに乗り込んで行って餌をついばむ。それに続いて勇気のある何羽かがヒヨの横に割り込んでいった。お前ら態度がでかいぞ、ヒヨがときどき威嚇してスズメにとびかかる。その度にスズメはいったん身をかわし、また餌台に戻る。
 そんな応酬をしているうちに、他のスズメもヒヨドリを恐れなくなった。とうとう餌台には一羽のヒヨドリと数羽のスズメが並んで食べるようになった。もう一羽のヒヨドリも来て、二羽の間にスズメがはさまれて食べている。木の実を好むヒヨさんだが、冬場は食べるものが乏しい。糠はふだん食べたことがないが、スズメが食べるのなら、自分たちも食べられるだろうというわけだ。
 餌台の米糠は、2時間ほどで全部食べつくしてしまった。