今朝は雪

michimasa19372009-02-12




朝、目覚めれば、一面の雪。


昨夕5時ごろ、白い煙のような雪降りの塊が、山の麓を移動して広がっていた。
雨の場合、遠目にも雨が降っているのが見える「雨脚」という言葉があるが、雪の場合にそれにあたる言葉がない。
「雨脚」になぞらえて言うなら、「雪脚」になるが‥‥。
山の中腹より下に、雪雲があってそこから明らかに雪が降っている。
しかし雪雲はここまで来そうになく、
限定された地域気象のようだった。
ところが朝起きれば雪。


立春過ぎてずいぶん日ざしが長くなり、
電動のこぎりで工房の柱を刻む微妙な技が限界にくるのは、5時を回ってしばらくしてからだった。
4時に太陽が西の山に沈むと、それまで温かかった空気はたちどころに冷え、
5時を過ぎると、柱のホゾを刻む部分につけた墨が見えにくくなる。
6時近く、もう手元も暗い。
こうなるとと、工事は終わりにする、そのころ、
思いがけず雪雲が山から下りてきたのだった。
山は雪のようだったが、平地に雪は降るまいと思っていた。
そして、夜中に雪は降り積もっていた。


今朝、大工仕事はできるかな、と思っていたら、ダイスケ君がやってきた。
今、柱の刻みをやっている。
それが完了すれば、建てかたにはいる。
ダイスケ君が、細かい計測をやりながら墨つけをしてくれたところを、ぼくが刻んでいく。
このような精密な計算によって、建物はがっちりと組み立てられていく。
電動のこぎりを縦に動かして、柱のホゾを刻むのはかなり難しい。
墨が見えにくく、のこぎりの刃を見ながら、墨からはずれないように動かすのは力もいる。
材木のその部分に、節があると、のこぎりの刃の切れ味は落ち、刃は前へ進みにくくなる。
高速回転する刃の切断面から煙が上がってきた。
墨から少しゆとりをもって切り、あとの仕上げはダイ君が、カンナを使ってやってくれる。


それにしても、こんな山小屋のような建物でも、
土台から屋根までの骨組み(柱組み)ですら、細かい作業の積み上げになる。
こんなにも時間がかかるとは思わなかった。
それができて、屋根葺き、外壁、内壁、床ふきと、さらに細密な作業が続く。
大工という仕事は、とてつもない仕事だとつくづく思う。
寺などの建築は、奇跡的な仕事だ。
日本の木造建築の偉大さ、
東大寺法隆寺薬師寺唐招提寺、奇跡的な建造物の数々、
深いため息が出る。