八ヶ岳クラフトフェア


店・2頭の羊・店・ななかまど


            オリジナリティ
       
    
実を付けたカリン並木と、オレンジ色の小さな実をたわわに付けたナナカマド並木に沿って、
「花梨(かりん)の小径」と名づけられた歩道は湖岸を船乗り場まで続いている。
連休の初日、諏訪湖畔の公園で、「八ヶ岳クラフトフェア」が開かれた。
例年は八ヶ岳山麓農業大学校の広大な敷地内で行われてきたが、今年はどういうわけか、諏訪湖畔になったのだという。
朝から塩尻峠を越えて、諏訪湖へ出かけた。
湖畔の公園芝地にテントが200ほど建っている。


陶芸、木と竹の工芸、ガラス工芸、染色工芸、皮革細工、金属工芸など、
間口一間ほどの小さなテントの店に全国から集まってきたオリジナリティ。
出店の申し込みをして選抜されるということだが、
申し込みの多いのはやはり地元の長野県、
店の数を目録で調べてみたら、長野は71、
他県で多いのは、愛知18、山梨18、岐阜16、東京13、神奈川9、京都9など近隣の県。
北海道から2店、福岡から1店、来ている。


オリジナリティと言っても、
いいなあ、自分も作りたいなあと、最初は模倣から始まった。
だから作品に類似性のあるものが多い。
そこへ自分の創造性を付加していく。
そこがおもしろい。


店のなかに制作者がいる。
話しかけると、作品の話が盛り上がる。
家族で来て店をにぎわしている人もいるし、ひとり孤独そうにしている人もいる。


10センチ角の木の板に取り付けた鉄のピンを爪弾いて、曲を奏でている人がいた。
なかなかうまいもんだ。
同じような楽器を作って売っている人が別のテントにいて、
「この楽器は、アフリカの原住民が作り出したもので、
白人がいろんな楽器を持ちこんで、つぶれると捨てていったんです。
アフリカ人はそれを拾って、工夫して音が出る楽器に作り変えたんです。」
なるほど、そんな歴史があったのか。
楽器が小さな音を響かせると、店をのぞく人たちの顔がほころんでいく。


胴体にもう一つ穴が突き出ている焼き物の壷を芝の上に置き、
上の壷の口をたたいて、音を出している人がいた。
ポンポンポン、音がたたき方で変化する。
楽器の周りには、沖縄の陶器のような獅子の顔が並べてある。


動物の粘土細工の置物を作っている人がいた。
この黒い犬、我が家のランそっくりだあ。
体長5、6センチの犬の顔かたち、よく似ている。


かぼちゃ、ナス、蓮の実、稲、栗の実、
あらゆるものを炭に焼いて作ったアートの店がある。
「この栗のイガは、細いから折れるでしょう。」
「いいえ、麦の穂も、折れないで作れます。」
栗のイガは、真っ黒に炭化しているけれど、触ってみるとしっかりと硬い。
「いろんなものをやってみて、こうして炭の作品にすることができることがわかりました。」
と、制作のおばさん。


中央アジアカザフスタン人の若者が二人、
故国の焼き物や布製品を置いていた。
いろんな穀物を乾燥させて白木の箱に色とりどり詰め合わせた作品は、地元の富士見高原の工房。
ウイスキーの酒樽を使って、椅子などの家具にして持って来た人。
壊れた昔の、手回しの粉引き器をランプに作り変えている人は、捨てられた鉄製品からアートを生み出している。
剣道着を染め替えて、素敵なコートにしている人もいた。


そういうことも、できるんだなあ、
身の回りの物をもういちど見直すと、アートになるなあ、
何気ない生活の工夫、
刺激されるために、見て楽しむために、来た人が多いのだろう。
買う人は少ない。
「あんたたち、これでオマンマ食えるのかい。」
と質問を投げかけているおじさんがいた。


どこからやってきたのか、羊が2頭、ひょこひょこ草を食べながら歩いている。