日本の医療


       キューバは貧しいが医療は先進国


JR大糸線は、信濃大町日本海に面する糸魚川を結ぶ線。
鉄道のなかった時代は、糸魚川から大町まで塩を運んだ「塩の道」が通っていた。
その糸魚川市の姫川病院が倒産し、閉鎖された。
慶応大学教授の金子勝氏が現地を訪れ、医療から突き放されていく人々の声を聞いて、
医療現場に今何が起きているかを探り緊急提言する番組が、NHK教育TVで放送された。
日本では、次々と病院が倒産し、閉鎖していっているという。 


奈良で、産気づいた妊婦を受け入れる病院がなく、次々入院を断られ、死産したという事件があった。
救急車の中で、受け入れ病院を探すのに、何時間もかかったのだった。
奈良に住んでいたとき、家内が夜に胃痙攣を起こし、救急車を呼んだ。
救急車はすぐに来てくれたが、車の中で救急隊員は次々電話を入れて受け入れ病院を探した。
診療してくれる病院を探すのに小一時間近くかかった。
その間、家の近くの道路わきに救急車は停車したままだった。


新聞に、キューバの医療について書いていた。
山田厚史の文章で(「朝日」)、
次のような内容だった。
キューバは医師の育成に力を入れ、地域医療の先進国である。
キューバは貧しい国ではあるが、乳児死亡率は米国より低く、
平均寿命は77歳。」
そして、吉田太郎氏の著書「世界がキューバ医療を手本にするわけ」を引用し、
キューバでは、下町から山村まで地区ごとに担当医がいて予防医療が徹底していて、
医療費はすべてタダ、WHOが太鼓判を押す医療大国である、という。
一方、大国アメリカでは、「民間でできることは民間で」と、医療保険に頼り、
結局医療保険に加入できない人たち4500万人は医療を受けられない。
中国も同じ、国民皆保険制度はなく、金持ちは最高の医療が受けられるが、
貧乏人は病院にいけない。


「民間でできることは民間で」というのは、小泉改革のスローガンだった。
そこから、医療の破綻が深刻化してきた。
診療報酬の引き下げによって、病院経営が赤字になってきたという。
地方にそのしわ寄せが出た。


「医師の人格教育と地域に根づく予防医学を重視するキューバにヒントがある」、
長野で地域医療に取り組んでいる色平哲郎医師のこの言葉を紹介し、
山田氏は、
キューバには、薬漬け医療はない。
生活指導と伝統医療の工夫、それを支える地域の連携、
低医療による良質なサービスの母体が共同体で、
その中核に医師がいる。」
と述べている。


制度を改革するとき、
制度以前に改革していかなければならないことがある。
平氏の言う、「人格教育」という言葉に、その一つの意味がある。
高い報酬を得、快適な条件で働けることを第一目的に職を得ようとすれば、
僻地は切り捨ての対象にしかならない。
少人数で、休む暇もなく働かなければならない医師の勤務条件を改善し、
心ある医師が、必要な数だけ、地方の病院で医療に打ち込める、
そのことが成り立つように、政策を進行していくことが不可欠だ。
それが政治というものだ。
教育についても共通のテーマだ。