カラスの知恵


          クルミとカラス


稲の黄金色と蕎麦の花の白、安曇野は収穫の秋が近づいています。
蕎麦の畑は、昨年より増えた感じです。


道に3羽のカラスが下りていました。
近づいていきますが、逃げません。
4,5メートルのところまで来てやっと飛び立ちました。
カラスがいたあたり、アスファルト舗装の道には、クルミの実の殻が数個落ちていました。
殻の内側の、クルミ特有のなぞめいた模様も見えます。
どうしてこんなところに? あのカラスかな。
しかし、あたりは稲と蕎麦ばかり。
クルミの木は、そこから500メートルほど行かなければありません。
クルミの林には、青い硬そうな実がたくさん枝についていました。
収穫まではもう少し時間がかかりそうに見えましたが、
道に落ちている殻のクルミは、すでに食べられることを示しています。
カラスだとしたら、どうしてこんなところに。
それに、あの硬い殻をどうやって割る。
何回か、道に転がっているクルミの殻を見ました。


数日後、また3羽のカラス。
道から飛び立った彼らは、口に何かくわえています。
いったん田んぼに戻って、1羽が飛び上がり、
道路の方へ戻ってきます。
道路の上まで来ると、くちばしから、クルミをぽとり。
カランとクルミは音を立てました。
はあ、アスファルトの上に落として割っているのか。
合点がいきました。


クルミを割るカラスは、TVで観たことがあります。
その方法をカラスたちは、共有しているのでしょうか。


宮崎の幸島のサルの話がありました。
若いサルたちが砂の付いた芋を海水で洗って食べはじめた。
その方がおいしい。
が、年配のサルたちは、それをやろうとしなかった。
けれど次第にそのやり方がサル社会で伝播していくと、
ある臨界点を越えたとき、芋洗いはすべてのサルに広まった。
芋洗い文化の形成。
有名な「100番目のサル」の話でした。


カラスは、どうした経緯でクルミが食えると考えたのだろう。
1羽のカラスが、偶然クルミを空中から落としたら割れた。
割れたら食べられた。
まず最初に、偶然の体験をした。
そういう体験をしたとしても、
「高いところから落とすと、物は割れるという理」を知ったことにならないと、
クルミ割という方法は生まれてこない。
こうしたら、こうなる。
カラスは、そういう理を発見して、この方法を使い出したのだろうか。
さらに、それが仲間に広がっていったとしたら、
仲間は、その方法を行っているカラスを観て、
認識をしたということになる。
ははーん、そうしたら、そうなるのか。
自分もやってみよう。


人間の場合はそれを積み上げてきたのですね。
ですが、動物たちは?
やはり彼らも、
生存に必要なものを獲得するための知恵を、持っているようです。