今日はゴミ当番


      Kさんのばあちゃんと二人で


「初めての『ゴミ当番』です、よろしく。」
今日の相棒のKさんが当番小屋に来ておられたから挨拶した。
午前7時から8時まで、この地区の「燃える家庭ゴミ」が公民館横の集積場に集まってくる。
自治会では輪番で、ゴミ集積の管理当番をする。
「どちらさんで?」
「そこのMさんの家に引っ越してきた吉田です。」
「私は、この道の、あの家の向こう」
「ああ、あの森のような屋敷の家ですか、大きいですね。」
Kさんちのおばあちゃんだった。


一雨来てほしいもんだね、
毎日、どんがらどんがら、照って照って、36度だわな、
こんなことはこれまで、なかったね。
30度を越すなんてね。


うちは、3町歩作ってるだね。
昔はさ、手でこうやって、夏の盛りに草取りしただわ。
うちの主人は80だがね、
今も田んぼに出てますよ。
今は機械化されて、農薬使うからね、
昔は、腰をかがめて、泥田をかきまわして草取りしただがね。


このあたりの農業水路、今はみんなコンクリートになっただがね、へえ、
昔は、こう、うねうねと、自然の川みたいに流れていただから、
水が、土の中に浸透してさ、
まあ、上の田んぼから、このあたりまで来たら、水が少なくなってね、
それでよお、下の人さ、困ったもんだ。
上のほうは水が冷たくてね、
収穫量は多くはなかったけど、おいしい米だね。


あれ、孫が帰ってきただ。
何か忘れ物しただな、
何、忘れた?


娘さんかね、中学生?


へい、中学生だね。息子家族と一緒に住んでるだ。
ここに嫁に来たときゃ、この地区、今の人口の半分だったですよ。
家も建て替えてさ、
前の家は大きかったね、こんな、それ何と言うかね、
それそれ、梁、こんな太いものだった。


それどうしました? 

大工が持って帰って燃やしたんでねえの。

惜しいねえ、もったいない。

今じゃねえ。
涼しい家だったしね、来た人みんな、この家は涼しいと言っただ。
今の家は、壁が多くてさ、暑いね。
ここには蚊がいないって?
以前はいただよ。
夏は蚊帳をつってね。
私らは今も釣ってるだよ。青い蚊帳が好きでね。
蚊がいなくても、夏は、蚊帳がいいね。
一時、農薬の空中散布をしたりしてたからさ、
それで蚊がいなくなったんじゃないかねえ。


さっき、ゴミを出しに来た人は、看護婦をしてた人で、
山登りするだ、昨日常念に行ってきただね。
定年退職後も介護士か看護士をしていて、常念岳の山小屋の診療所に行ってきたんだね。
子どものころは、ここの中学校は毎年生徒を常念岳に連れて行ってただ。
今年は、登山路が去年の豪雨で壊されたから、燕岳とか言ってたな。


「集まりましたなあ」
車やバイクや自転車でゴミを次々持ってくる。
ここだけでこれだけあるんだから、市全体では猛烈だろうな。
寝たきりのじいちゃんのウンコをオムツごとくるんで持って来た人がいた。


ゴミの量が多いね。
「燃える家庭ゴミ」を出す日は、週に2回だからね。
私の家では、家庭の生ゴミは、全部庭の土に還元してるんですよ。EM菌なんかでボカシつくってね。
そうそう、私の家もゴミ出さないですよ。堆肥にするのがいいだね。
生ゴミだけでも、堆肥化すれば、もっとゴミの量を減らせるんだがね。
この地区でまず、堆肥にできる生ゴミを集めて堆肥にする仕組みを作るといいだがなあ。


一時間、ずっとお話をして、ときどきゴミを積み上げたり、荷を運ぶ手伝いをしたりした。
あっという間に、時間が過ぎた。
Kさんのばあちゃんと近づけて、いろんなお話ができて、楽しかったなあ。