山尾三省を偲ぶ  3

 

 

 屋久島の森には、樹齢五千年、六千年と推定される老杉が自生している。縄文杉は七千二百年と推定されている。三省は、この杉を「聖老人」と呼んだ。

屋久島の森を営林局は伐採してきた。残った縄文杉をどう守るか、これが三省の大きな目的になった。それはこの地球をどう守るかにつながる。

 

    三省の数々の著書は、三省の遺言である。

    私たちの時代は、「為すこと」を棄てて、「為さぬこと」を学ぶべき時代である。「為すこと」の内に、「為さぬこと」を学ぶべき時代である。

    現代は、「為すこと」の頂点に置かれた核兵器という普遍悪のもとにある時代である。このまま「為すこと」を続けていけば、核兵器は炸裂するほかはない。

    現代は、環境問題が歴史上、かつてなかったほどに真剣に考えられているにもかかわらず、個人の胸の内を支配している感情は、相も変わらず、人類は地球の王であるという、20世紀を支配していた思想心理のカスである。

    重症のガンをかかえ、死と向き合って暮らしているこの自分は、永劫の宇宙から生まれ出たものであり。その一断片である。永劫という事実から見ると、その存在は全宇宙の重量である。

 

 

    今私たちの生きている時代が

  やがて「過去」と呼ばれるとき

  私たちは未来のあなたたちから

  なんと呼ばれるのだろう

  地球をこんなに駄目にしたのは

  二十世紀を生きたあの人たちです