「虚無」の文明

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 M・エンデの書いた「はてしない物語」。

 架空の国ファンタージェン国の一部に、突然「虚無」が広がり始める。「幼なごころ姫」が重い病気にかかり、「虚無」はものすごい勢いで国を呑み込んでいく。ファンタージェン国は壊滅の危機に陥る。その物語を読んでいた一人の少年が、物語に引き込まれて、やがて物語の主人公になって、姫を助けに行く。姫の病気の回復とともにファンタージェン国の崩壊は押しとどめられる。

 山尾三省は、この「虚無」の実体は何かと考え、核兵器原子力発電と放射性物質ではないかと思い、さらに現代の文明の全体が、一つの巨大な「虚無」の実体だととらえた。エンデ来日のニュースを知り、屋久島から東京を訪れた三省は、自分の学んだ千代田区の小学校を訪れ、児童数の極端に少なくなっていることと、東京の中心に子どもの姿が見えないことに驚いた。東京の中心部から確実に『虚無』の輪が広がりつつある。「虚無」は東京だけでなく世界中の文明都市に広がっている。

 現代文明がはらんでいる巨大な「虚無」、三省がそのことを書いたのは1986年だった。

 それから、

 経済バブルの膨張、バブル崩壊、打ち続く自然災害、フクシマ原発爆発、地球温暖化の急進、生態系の激変、コロナウイルス‥‥と続く。 

 

 世界中に「虚無」が拡大し、猛威を振るっている。国家繁栄と経済発展至上主義、富裕な生活を最大の目的とする文明のなかに「コロナウイルス」の「虚無」が深い淵をつくりはじめている。